白い壁に白い廊下。そこに歩くのは防護服に身を包んだ二名の男性。
なにもない廊下を歩み進めると、簡易的なシャッターが。それを腕につけているリングを読み込ませ解錠。
更に廊下を進んでいくと、強化ガラスの向こうに少年が座っていた。少年は10歳くらいだ。そして少年は右腕が大きく黒い毛に覆われている。まるで熊のような腕。暴れないように杭で右腕は何箇所も固定されている。
「おい!お前たち!これ外せよ!!」
それを男性たちは横目で見ている。
「…あれが、被験者の一人だよな。」
「ああ…Dr.が言っていた。かれはDNAが特殊だって。」
「Χ/Ψの遺伝子を持つと特殊な力を得ることができるって。」
「ああ、それもDr.とかごく一部の人間が調べて知っていることで、世間ではようやくそういった遺伝子がふえていることに気がついているだけ。」
「…それで…今から向かう少女も…。」
「ああ、Χ/Ψの遺伝子を持つ…つまり能力者だ。」
「なぜ…少女は監禁を?」
「彼女の場合はまだ能力が未知であるからで。もしかしたらある日突然、怪物に変身するかもしれないし、空を飛ぶかもしれない。」
「…それは…まだわからずじまいか。」
「だから…こうやって彼女の欲するものは、Dr.の指示で与えているわけだ。」
二人の男性が廊下進む。その先に白い扉と強化ガラス。
そこに座っているのは金の髪をした、痩せこけた一人の少女だ。髪はボサボサで大きな独特な木の枝のような髪留めで無理矢理にまとめてある。
「…ファイ…食事だ。」
「それと…希望通りかな?ステンレス製の球だ。」
振り返る少女こそがファイだ。防護服から食事と手のひらにのる美しい鏡面加工されたステンレス製の球だ。
振り返る少女。青い瞳が印象的だ。しかし、少女には生気が薄く、薄幸なんて言葉が似合ってしまいそうだ。年齢も15くらいで、防護服の人に近寄ってきても頭一つ背も低い。
弱々しい笑みを浮かべてステンレス球を手にする。
「…きれい…。」
「…それじゃ…食事はしっかりと取るんだぞ。」
「Dr.の指示だから。」
「…食欲…あんまりないの。」
「…そう言うな…、君の研究が進んでいる。Dr.が君のことを研究している以上、君は大切に扱われるが指示に背けば我々はもちろん。君だって何をされるかわからない。食事をしっかりするのと、欲しいものを与えるのが今の指示だ。…だから今のうちだ。ステンレス球でも髪留めでも何でもいうと良い。」
「…あと…すまない、採血の指示もある。」
そういうと、ファイは素直に腕を出す。腕にはいくつもの痣が痛々しく残っている。ファイは防護服の人は採血を済ます。
「…それじゃ…また…用事があればボタンで呼んでくれ。」
「…ああ。」
二人のが去っていくのをファイは軽く手を降って見送る。そして白い扉がしまっていく。その隙間を、さっきのステンレス球が転がって出ていく。
防護服の二人はそれに気づいていない。
「…あんな少年少女を監禁とは…。」
「…特にあの少女は本当に能力者か分からない。…あの痩せた姿に表情。こっちの胸が痛む。」
そんな会話をする足元をステンレス球は転がっていく。
すると防護服の二人に先程のファイからの呼び出しボタンが押された通知が。
「?」
「珍しいな。」
二人は部屋に戻って扉を開けた。