第三章☆社長くん
コンコン。
仁がドアをノックすると、社長秘書らしき女性がドアを開けた。
「ああよかった!社長がお待ちです」
ああよかった?仁と隆は顔を見合わせた。
奥の社長室に通されると、社長の椅子に一人の少年が深く腰掛けていた。
贔屓のチームの野球帽をまぶかにかぶり、ぶかぶかのスーツ姿だ。
「おじさんたち誰?」
「おぢさん?!」
まだ若い仁と隆は激昂した。
「社長はどこですか?なんで子どもがここで遊んでいるんです?」
秘書に聞くと、秘書は何回もなにか言おうとしてやめた。
「ぼくが社長だよーん」
少年が悪びれず言う。
「本部から赤と青のカプセルを飲んで超能力を持った敵が乗り込んできたら、迷わずぼくもカプセルを飲んで対抗するように指示が来たんだ」
「でも」
仁は思わず言った。
「でも、どういうわけかこういうことになっちゃってる」
少年は肩をすくめた。
「もう定年間近で、若返りたいもんだとずっと思っていたからね。そのせいだろう。超能力はうまく扱えないし、君たちのいいようにしてくれ」
仁と隆は再び顔を見合わせた。
「あのう」
秘書がおずおずと言った。
「社長を助けてください」
「ぼくはもうもとに戻る気はないよ!」
社長くんが叫んだ。
「あのな、言いにくいんだけど、カプセルの薬の効き目にはタイムリミットがあって、きれたらまた飲まなくちゃならないけど、それも限度があるらしいんだ」
「なんだって!?」
社長くんが血相を変えた。
「しゃ、社長!もとに戻るまでご辛抱ください!」
秘書がハンカチを力いっぱい握りしめて懸命に言った。
「やーなこった。おい、君たち」
「なんだ?」
「君たちと一緒の博士はどうしている?彼が薬を持っているだろう?」
「だから?」
「だからぼくを一緒に連れて行け!」
仁と隆は三度顔を見合わせた。