突然であれなんだけど、なんか良く分かんないけど、今日は月食らしい。
だから何だっていうんだけど、一時的に暗くなるので、夜間の戦闘しにくいとかなんとか。
それから魔術的な意味があるそうだ。
まだ、警ら隊とヒカリちゃんたちが帰ったばかりで、10日目の午前8時ぐらい。
彼らはリアルで寝るそうだ。
ウサギさん帽子は村で装備していると、まだ目立ちすぎるため、外している。
そのうち量産されて、皆つけるような感じになるかもしれない。
露店をチェックして、森へ行って、夕方帰ってきて、村長の家でお肉を干して、今に至る。
広場にNPCをはじめとする人が集まってきていた。
今日は、夜なのに中央広場で屋台が出ている。
祭りみたいな感じになっている。
まず、ウサギの肉串を焼いているのは、もう一つの宿屋のご主人だ。
焼きたての肉串はかなり売れているようだ。
ボノックじいさんは隅の方で「装備の補修賜ります」と掲げている。
でもあんまり繁盛していない。
雑貨屋のジェイクが今日は「ジャガイモのポタージュスープ」の屋台をやっているようだ。
隣にトラニー君もいて接客を担当していた。
他にも村人の屋台があり、ビールとトマトジュースの店があった。
トマトジュースを飲んでみたけれど、かなり酸っぱいわこれ。
どうやってきたのか不明な流れの商人が「入門用ロザリオ」を売っていた。
「回復役に転向したい人にお薦めだよ。普段は前衛で、副業で回復役をする人にもおすすめの逸品だよ。数はあるから見てってよ」
気になったのでロザリオの補正を確認。
●入門用ロザリオ
入信したばかりの信者が使うロザリオ。木製の量産品。
種別:武器
レア度:2 ランク:2
魔攻力:3
回復力:10
耐久:90/90
初心者のロザリオとほぼ同性能だ。これは初期武器から変更したい転換者向けの装備のようだ。
掲示板で確認したところ、他の村でも同様のロザリオが売りに出されているようだ。
お金があるなら、パーティーに1つあれば余裕ができると書いてあった。
「ポーションより、回復役を連れていた方が何かと便利ですし、不味くないからいいよ」
NPCもポーション不味いの知ってるなら改良してくれよ。
ちなみにお値段7,000セシルだ。はっきり言えば高い気がするわ。
村長のアブダヒデは村の警備員と一緒に、見物して回っていた。
一応この村にも警備員の2人組が3交代でいる。
とりあえず、挨拶だけはしておいた。
冒険者ようはユーザーたちは、ゴザをひいて露店をしつつ月を眺めたり、その辺に立ったまま、月を見上げたりしている。
なかには、カップルだろう二人組が、ゴザに座って肩を組んで、やはり月を見上げている。
ちょっとうらやましい。
「あー。わたしたちは女の友情を深めようね~。はに~」
クルミは小さい声でそう言ってきた。
「あ、うん。これからもよろしく」
「ミケっちはたんぱくだな~」
他にも適当に会話した。
そのうち、月が横から欠けてきた。
でも欠けたところは、暗い赤色をして、完全に見えなくなるわけではないようだ。
そのうち、どんどんかけて、最終的に全部が暗い赤になった。
皆既月食だ。
もっとも、この世界は少し不思議で毎日月が夜出ているので、天体の動きがどうとかは、適当みたい。
ブラスミ君がいる。
遠くからボノックじいさんの補修屋を眺めていた。
「こんばんは。ブラスミ君」
「ミケさん、こんばんは」
「修理のボノックじいさん、気になるの?」
「はい。武器の扱いになれてるみたいだったので」
「あのじいさん、鍛冶屋だったから、弟子になってみれば。引退したみたいだから無理かもしれないけど」
「やっぱりそうなんだ。俺、ちょっと声かけてきます」
「一緒に行ってあげる」
私たちは、ボノックじいさんに声を掛けた。
「お嬢さんたちかい。冒険者がたくさんいるのに、全然、客が来んわい」
「この人はブラスミ君。鍛冶屋を目指してるんだけど、教えてくれる人が見つからなくて、ボノックじいさん、教えてあげてくれませんか?」
「あん。わしは引退したんじゃが、どうしても、と言うなら触りだけならいいぞ」
「あ、ありがとうございます!」
「まずは補修の仕方からだぞ」
ブラスミ君は、無事入門を果たせるようだ。