第98話 憑依

電脳娘々は邪気を追っていた。

(この方向は…番外地)

電脳娘々は感じていたが、

とにかく、追っていき、捕まらないことには話にならないので、

追っていくことにした。


一方、

こちらは番外地の人形師の住まい。

フランス人形、日本人形、様々の人形がところせましと並べられている。

黒い風が廃ビルにいた頃は、

思いを人形達が溜め込んでしまって、大変だったが、

今は落ち着いて、人形と対話したり、

他人をびっくりする術を考えていたりする。


黒いものが窓から飛び込んできて、

きれいなフランス人形に入り込んだのは一瞬だった。


フランス人形のまとっていた雰囲気が変わる。

フランス人形は無表情のまま、

人形師の首を絞めにかかる。

「エリー、やめなさい」

人形師がそう言うと、

人形がやめようとする。

しかし、中から無理矢理、首を絞めるように動かす力が働いているようだ。

ぎりぎりと人形から音がする。


「邪魔するよ!」

バタン!と、音を立てて扉が開き、

電脳娘々が飛び込んでくる。

「そこか!」

と、電脳娘々が飛びかかれば、

エリーというフランス人形から、

素早く邪気が抜けていった。

そして、また、窓から邪気は逃げていく。


「取り逃がしたか…」

電脳娘々は、ちっと舌打ちすると、

「邪魔して悪かった」

と、言い残して、人形師の住まいをあとにした。


残された人形師は、

電脳娘々や邪気のことなど忘れて、

荒らされた人形達を元に戻し、

エリーの修復にかかった。


人形師は、結局、人形がすべてなのだ。