第97話 微熱

斜陽街を歩き回っているヤジマとキタザワ。

キタザワがふと気がつくと、

ヤジマの足取りが重い。

「どうしましたか、ヤジマさん」

「だるい…」

キタザワはヤジマの額に手を当ててみる。

「ちょっと熱ありますね…どうしたらいいかな」

いつもなら強がりの一つもいうヤジマも、

どうも調子がよくないらしい。


キタザワは、すれ違った斜陽街の住人に声をかけた。

すると、

「熱があるなら、一番街の熱屋。病気にかかったなら、熱屋の隣りの病気屋に行きな」

という返事が返ってきた。


キタザワはヤジマをおんぶして、

一番街の熱屋に向かった。


熱屋はすぐに見つかった。

店内に入ると、

女性が一人で店番をしていた。

「あの…熱屋…さん?」

「ええ」

「この女性が熱を出してしまって…」

キタザワがヤジマを座らせる。

ヤジマはぼんやりしながら、されるままになっている。

熱屋はヤジマの胸のあたりに手を当てる。

「平熱あたりまで下げますね」

と言うと、ヤジマと熱屋の間に、数個、オレンジ色のカプセルが出来た。

手品かとも思ったが、

斜陽街とはそういうものだとも思った。


隣りの病気屋に行くと、

病気屋のもっさりとした熊のような主人がいた。

そして、ヤジマを一目見るなり、

「ああ…培養していたのに感染したようだね」

と、言われた。

「菌が一部盗まれたらしくて…それにかかったんだろう。熱は下げてもらったのかな」

ヤジマはとりあえず頷く。

「なら、処方箋書くから、三番街のがらくた横丁というところの、薬師をたずねるといい」

病気屋はさらさらと処方箋をしるし、

ヤジマに渡した。


「この街って…変な街だな」

「そうかもしれませんね」

ぽつぽつ話しながら、ヤジマとキタザワは三番街に向かった。