「……では、
腕組をして偉そうに立っている縁、国政は力量差を感じてか動けない。
「どうした? 全身全霊をかけて、私を滅ぼしに来い」
「……失礼、動揺してしまいました、ここまで力量差があるとは」
「戸惑いや恐れは人間に必要不可欠な感情だ、恥じる事は無い」
「ここで死ぬならば……我が主の供物となるまで!」
国政は気合いを入れて両手を合わせた!
その言葉に縁は顔をしかめる。
「『対価!
命を燃やすかのような、赤色のオーラに国政は包まれ、縁はそれを見て感心している。
「命を燃やし主の糧となり、その代わりに力を得るか」
「笑うか縁の神よ! 誰に理解されぬとも! 我が主に私が捨て駒と思われていようとも!」
国政を包む赤色のオーラが更に膨れ上がった!
縁は珍しく驚いた顔をした、そして期待の目で国政を見ている。
「私の忠誠心は本物だ!」
「見事だ、
「これが我が力……『色彩の力』です!」
左手で右袖から白色のお札を取り出して、そのまま左手に置いた。
「貴殿に捧げる色彩はこれだ! 冬の夜中、
持っていたお札は夜の寒空の色に染まった。
「雪そのもの、
右手の人差し指と中指でお札をなぞると、舞い散る雪が描かれた。
「寒さを
今度は両手で札を挟み、胸の前で手を合わせる。
手を離すと、お札には抱き合う男女が梅の赤い色で描かれていた。
「これぞ、恋人達を彩る冬の寒さ……
札は一瞬にして無くなり、代わりに水蒸気が辺りを包み。
縁の姿がウサミミを付けてる時、普段の姿へと戻ってしまった!
「これは……結びさんの想いも止められたか」
「この霧がある限り、信仰心……いや、愛の力でどうこう出来んぞ!」
「ならば、はかり知れぬ幸運が残ったな」
「ゴホ! まだ足らぬか……次で決めなければ」
「今度はこちらから行くぞ」
吐血する国政だが、縁はまだ余裕の表情を出していた。
そして何処からともなく、遠方からビームか波動の様なモノが国政を狙った。
間一髪でそれを回避した。
「なっ! この攻撃は何処から!」
「今はあちらこちらで戦争中だ、流れ弾に注意するんだな」
「……なるほど、運が良いのレベルが違う」
どうやら今のは、運良く呼び寄せた流れ弾の様だ。
国政もこの程度は安易に受け入れた。
それよりも、国政は傍から見て立っているのがやっとだ。
「ごばぁ! じ、時間が無い……これが私の最後だ! 縁の神!」
盛大な吐血をして気絶寸前の顔、一矢報いる意思を感じさせる足の震え。
それらを振り切り、右手で気合いを入れてお札を取り出して、そのまま顔の前で念じる様に持っている。
「我が心の色は
それは心の熱さを表す赤い色、白いお札は燃え上がる様にそれに染まった。
「我が身体は
お札に飛び立つカナリアが描かれる、自由へと飛び立つ様に。
「そして! 我が最後の人生は……虹色だ!」
お札に虹色に変化する山や湖、森や木々の背景が描かれた。
完成したお札は、小枝から空へと旅立つカナリアだ。
「私の全てだ! えにしのかみいいぃぃぃぃ!」
「なっ! 速い!」
国政は完成したお札を、素早く縁の胸に押し付けた!
「ぐおおぉぉぉぉぉおおおお!」
縁は悲痛な声を上げ、胸から血を吹き出して倒れた。
そして一瞬だけ、ほんの一瞬だけ気絶する。
だが次の瞬間は意識が戻った。
「無意味だろうとも……一矢報いた、人間を侮ったな……縁の神」
国政は満足な顔をして死に絶えた、するとその姿はカナリアへと変わる。
そして霧が晴れると共に空へと飛んで行った、周りにあった死体も消えた。
「現人神……お前はもう『色彩の神』だ、縁があったらまた会おう」
縁は元の神様モードへと戻った、風月は慌てて駆け寄る。
「ちょちょちょちょちょちょ! 大丈夫か縁!」
「ああ、手を出さずにいてくれてありがとう」
「って、もう元に戻ってるし」
「この程度で死にはしない……が、俺も調子に乗ってたな、人間の魂の一撃、しかと効いた」
「何か封印されたりしてないか? 力が下がったりしてないか? 必要ならイチャイチャするか?」
「大丈夫だ、この通りな……だが今回の相手は脅威らしい、今一度気を引き締める必要が出た」
「だね、油断はしたらだめだぞ」
「ああ、彼の主は七星了司と言うらしいな、そいつの側近が彼と同等かそれ以上と考えると気を付けねば」
「確かに、ならカミホン以外の連絡手段が欲しいね……あ、この子はどう?」
「ん?」
「
「……!」
風月の目の前に血の様な真っ赤な兎が現れた。
この兎は一本槍との手合わせで、風月が自分の血から生み出した兎術だ。
「あの時の兎術か」
「この子にもしもの時の察知とか任せられる?」
「ああ、これで互いに何があっても察知出来る」
縁は血風を抱っこすると、嬉しそうに身をゆだねている。
何回か撫でて風月に渡した、血風は少し不満そうだ。
「これで良し……あれ? マリナさんは?」
「とっくの昔に帰った」
「そうか、俺達も帰ろう」
「うん」
縁達はその場から消えた。