ロールが終わり、縁達はロビーへと帰って来た。
先にロールを終了していた人達が居る、大人数用の区画だ。
正吾に将軍や戦闘員達にタベリア防衛隊達の人達と、かなりの人数。
待機していた人達が縁達に気付いた、縁は頭を深々と下げる。
「お疲れ様でした!」
その場に居た人達は次々に頭を下げてた。
そして楽しそうな声が上がり雑談が始まった。
スファーリアはふと縁に言った。
「縁君は色んな人脈があっていいね、正蔵さんとはどんな出会い?」
「ほとんどその場の勢いだよ?」
「そうなの?」
「正蔵さんとはロールした事が無い」
「正吾君とは?」
「特撮で言うと、戦いが始まって逃げる人を何回かした」
「なんでそんな事に?」
「フリーエリアの突発イベントでさ」
「なるほど」
フリーエリアとは、特にプレイしたいシナリオやない人達が集まる。
そこにシナリオを持ち込んだり、その場のノリでロールが始まったりするエリアだ。
もちろん、参加したくないなら観客になる事も出来る。
「てか俺はスファーリアが地底帝国対して攻撃手段が無くてビックリした!」
「私が主役じゃないでしょ? 今回の主役縁君じゃん」
「ああ……そうか? まあでも地底帝国のヤバさが際立ったな!」
「どうして?」
「全てを絶滅してきたスファーリアの攻撃が効かないんだぜ!?」
「……ん? ああ、縁君と遊ぶ時って無双してたか、スファーリアも苦戦する時があります」
「な、なんだってー!?」
珍しくわざとらしい驚き方をする縁に、スファーリアはため息をした。
「……縁君、超テンション高いわね」
「いやだって! 変身ヒーローだぜ? 一瞬でもそれになっちゃったんだぜ? ゲスト参戦だからこその無茶もあったけども、ああ、語彙力が!」
「男の子だね~」
リッシュと砂時計が縁達の元へやって来た、再びお疲れ様と挨拶する。
「喜んでくれて何よりだ」
「リッシュ、見込みバッチリだったな」
「砂時計さん、あの変身時の言葉ってアドリブで考えているんですか?」
「普段は録音だね、今回は縁君が来るって事でリアルアフレコさ」
「おお、特別バージョン」
「ま、この間コイツセリフでせき込んだんだけどな」
「リッシュ、余計な事を言うな!」
「それ大丈夫だったんですか?」
「基本的に撮り直しだが、NGシーン集に行くだけだ」
「なるほど……ってそれ考えたら私、ぶっつけ本番だった、縁君、今度機会があったら私もリハーサルに参加します」
「……怒ってる?」
「いえ、考えたら大人数で作っている作品、それに対する私の意識が低かっただけ」
「待て待てスファーリアさん、いいんだよ、俺達はふんわりやっているんだから」
砂時計は気合いを入れるスファーリアを苦笑いしながらなだめた。
「ふんわり?」
「ああ、本気でやってるにはやってるんだが、本気になりすぎるのもダメだと思うってのがリーダーの考え方」
「リーダーって誰何ですか?」
「プレーリーの中の人、正蔵さんの父で俺と正吾のおじいちゃんさ、ちなみにジムグは奥さんで副リーダー」
「おお、そんな繋がりが」
「リーダーは本当にふざける人でさ」
「ロール中はそんな印象ないけど?」
「そりゃ人様とする時はキリッとしているんだ」
「ふむふむ、普段は?」
「……ふざけ過ぎて話が全然進まない、副リーダーが毎回脅すんだがな」
「脅す?」
「今日の晩御飯シャケにしない、とかその程度な」
「おおう、平和でいい関係」
「見てる分には微笑ましいけど、副リーダーの苦労が」
「ああ~」
そんな話をしていると、プレーリーとジムグが上機嫌でやってきた。
「おうおう、縁君にスファーリアさん、今日はお疲れ様だ! ありがとうな、いい絵が撮れた!」
「あなた、初対面の方にそんな挨拶しないでください」
「おまえな、ネットじゃこの位普通だろ?」
「ネットでも現実でもしっかりとしてください」
「匿名だから気軽に挨拶出来るんだろうに、現実だったら若い子前に萎縮してしまうぜ?」
「……今日の肉じゃがは無しです」
「うお! ちょい待ち!」
この会話だけでも普段のやり取りが想像出来る。
「じいちゃん、ばあちゃん、イチャイチャは後にしてくれ、今日もやるんだろ?」
「終わった後に何かあるんですか?」
「撮影会さ」
「おお、スクショ大会面白そう」
「あ、そいやロビーでそういった交流した事ないな」
「考えたらそうかも」
「ではでは早速はじめましょうぞ、記念撮影始めるから集まってくれー」
縁とスファーリアを中心に、あっと言う間に集合写真を撮る体制になった。
「俺達が真ん中でいいのかな?」
「何か主役な扱い」
「いいんじゃよいいんじゃよ」
「では遠慮せずに」
「よし、バッチリ撮影してくれ砂時計」
「あいよ」
「って砂時計さんはいいんですか?」
「ああ、おりゃ~声だけの存在だからな、ま、スクショマンは任せろ」
砂時計はメニューを操作してスクショを撮りまくる。
そして参加者達に送る、すると歓喜の声が上がった。
「うーむ、スファーリアさんが何か四天王ぽく見える」
「おお、面白そうだな! ワシとジムグで並んでみよう!」
「よしきた」
スファーリアを中心に左右にプレーリー、ジムグで並ぶ。
それぞれ気合いの入ったポーズをした。
「おお、これは」
砂時計はまたスクショを撮りまくる。
撮れたスクショは仕事ができる悪の幹部、みたいな出来だった。
「いいね、色々と撮ってみよう」
その後は縁が正吾達と変身する場面や、スファーリアが地底帝国の戦闘員達に対して無双等。
他のプレイヤー達も徐々に混ざって、様々な場面を想定してスクショ祭が続いた。