第四話 後説 スクショ祭のお知らせ

 ロールが終わり、縁達はロビーへと帰って来た。

 先にロールを終了していた人達が居る、大人数用の区画だ。

 正吾に将軍や戦闘員達にタベリア防衛隊達の人達と、かなりの人数。


 待機していた人達が縁達に気付いた、縁は頭を深々と下げる。


「お疲れ様でした!」


 その場に居た人達は次々に頭を下げてた。

 そして楽しそうな声が上がり雑談が始まった。

 スファーリアはふと縁に言った。


「縁君は色んな人脈があっていいね、正蔵さんとはどんな出会い?」

「ほとんどその場の勢いだよ?」

「そうなの?」

「正蔵さんとはロールした事が無い」

「正吾君とは?」

「特撮で言うと、戦いが始まって逃げる人を何回かした」

「なんでそんな事に?」

「フリーエリアの突発イベントでさ」

「なるほど」


 フリーエリアとは、特にプレイしたいシナリオやない人達が集まる。

 そこにシナリオを持ち込んだり、その場のノリでロールが始まったりするエリアだ。

 もちろん、参加したくないなら観客になる事も出来る。


「てか俺はスファーリアが地底帝国対して攻撃手段が無くてビックリした!」

「私が主役じゃないでしょ? 今回の主役縁君じゃん」

「ああ……そうか? まあでも地底帝国のヤバさが際立ったな!」

「どうして?」

「全てを絶滅してきたスファーリアの攻撃が効かないんだぜ!?」

「……ん? ああ、縁君と遊ぶ時って無双してたか、スファーリアも苦戦する時があります」

「な、なんだってー!?」


 珍しくわざとらしい驚き方をする縁に、スファーリアはため息をした。


「……縁君、超テンション高いわね」

「いやだって! 変身ヒーローだぜ? 一瞬でもそれになっちゃったんだぜ? ゲスト参戦だからこその無茶もあったけども、ああ、語彙力が!」

「男の子だね~」


 リッシュと砂時計が縁達の元へやって来た、再びお疲れ様と挨拶する。


「喜んでくれて何よりだ」

「リッシュ、見込みバッチリだったな」

「砂時計さん、あの変身時の言葉ってアドリブで考えているんですか?」

「普段は録音だね、今回は縁君が来るって事でリアルアフレコさ」

「おお、特別バージョン」

「ま、この間コイツセリフでせき込んだんだけどな」

「リッシュ、余計な事を言うな!」

「それ大丈夫だったんですか?」

「基本的に撮り直しだが、NGシーン集に行くだけだ」

「なるほど……ってそれ考えたら私、ぶっつけ本番だった、縁君、今度機会があったら私もリハーサルに参加します」

「……怒ってる?」

「いえ、考えたら大人数で作っている作品、それに対する私の意識が低かっただけ」

「待て待てスファーリアさん、いいんだよ、俺達はふんわりやっているんだから」


 砂時計は気合いを入れるスファーリアを苦笑いしながらなだめた。


「ふんわり?」

「ああ、本気でやってるにはやってるんだが、本気になりすぎるのもダメだと思うってのがリーダーの考え方」

「リーダーって誰何ですか?」

「プレーリーの中の人、正蔵さんの父で俺と正吾のおじいちゃんさ、ちなみにジムグは奥さんで副リーダー」

「おお、そんな繋がりが」

「リーダーは本当にふざける人でさ」

「ロール中はそんな印象ないけど?」

「そりゃ人様とする時はキリッとしているんだ」

「ふむふむ、普段は?」

「……ふざけ過ぎて話が全然進まない、副リーダーが毎回脅すんだがな」

「脅す?」

「今日の晩御飯シャケにしない、とかその程度な」

「おおう、平和でいい関係」

「見てる分には微笑ましいけど、副リーダーの苦労が」

「ああ~」


 そんな話をしていると、プレーリーとジムグが上機嫌でやってきた。


「おうおう、縁君にスファーリアさん、今日はお疲れ様だ! ありがとうな、いい絵が撮れた!」

「あなた、初対面の方にそんな挨拶しないでください」

「おまえな、ネットじゃこの位普通だろ?」

「ネットでも現実でもしっかりとしてください」

「匿名だから気軽に挨拶出来るんだろうに、現実だったら若い子前に萎縮してしまうぜ?」

「……今日の肉じゃがは無しです」

「うお! ちょい待ち!」


 この会話だけでも普段のやり取りが想像出来る。


「じいちゃん、ばあちゃん、イチャイチャは後にしてくれ、今日もやるんだろ?」

「終わった後に何かあるんですか?」

「撮影会さ」

「おお、スクショ大会面白そう」

「あ、そいやロビーでそういった交流した事ないな」

「考えたらそうかも」

「ではでは早速はじめましょうぞ、記念撮影始めるから集まってくれー」


 縁とスファーリアを中心に、あっと言う間に集合写真を撮る体制になった。


「俺達が真ん中でいいのかな?」

「何か主役な扱い」

「いいんじゃよいいんじゃよ」

「では遠慮せずに」

「よし、バッチリ撮影してくれ砂時計」

「あいよ」

「って砂時計さんはいいんですか?」

「ああ、おりゃ~声だけの存在だからな、ま、スクショマンは任せろ」


 砂時計はメニューを操作してスクショを撮りまくる。

 そして参加者達に送る、すると歓喜の声が上がった。


「うーむ、スファーリアさんが何か四天王ぽく見える」

「おお、面白そうだな! ワシとジムグで並んでみよう!」

「よしきた」


 スファーリアを中心に左右にプレーリー、ジムグで並ぶ。

 それぞれ気合いの入ったポーズをした。


「おお、これは」


 砂時計はまたスクショを撮りまくる。

 撮れたスクショは仕事ができる悪の幹部、みたいな出来だった。


「いいね、色々と撮ってみよう」


 その後は縁が正吾達と変身する場面や、スファーリアが地底帝国の戦闘員達に対して無双等。

 他のプレイヤー達も徐々に混ざって、様々な場面を想定してスクショ祭が続いた。