「言っとくが縁先、俺を包むのは地獄に落とされた者達の恨みだ、生半可じゃねぇぞ?」
「邪神も大変だな」
「今から体験だ!
「寒い地獄の1番目で鳥肌が立つだったか」
ダエワが指を鳴らすとゆらゆらと雪が降ってきた。
雪は少し離れている風月達の場所には降ってはいない。
「ここまで平然とされるとはな、
「2番目であかぎれが生じる」
特に動じもせず縁は淡々と説明して、ダエワは再び指鳴らした。
「マジかよ……
「5番目、寒さで口が開かず、喋ろうとすると『ふふば』と言ってしまう」
突然猛吹雪となり見ているだけでも寒い。
だが雪は縁の周りには積もっていない。
まだまだ余裕な縁にダエワはイラつく顔をすしながら、気合を入れて両手を合わせた!
「
白銀の世界、そんな――。
いや人間の表現では表現出来ない雪と氷の世界が広がる。
寒さの地獄の中で涼しい顔している縁だった。
「最後、寒さで身体が折れたり裂けたり、そしてハスの花の様に血を噴き出す」
「は、はぁ!? ここまでやって無傷かよ!」
「効くと思ったのか?」
「ケッ! だったら今度は常夏にしてやるぜ!
雪が止み、白銀の世界が終わり、今度は辺りが溶岩だらけになる。
多くの人がイメージする地獄とも言えなくない。
いつの間にか縁は断崖絶壁立たされていた。
そして後ろから地獄に居そうな小鬼達が縁を落とそうとしている。
その先は言うまでもなく溶岩だ、縁は珍しく殺意に満ちた顔をする。
「憂さ晴らしに殺生をした奴が落ちる地獄だが?」
「縁先にゃお似あ――」
「兎術・神縛り」
縁がそう言うとダエワの足元に魔法陣が現れた。
四方に兎達も現れて、ダンスでもしているかの様に踊る。
赤い糸が魔法陣から現れて、ダエワはあっという間にぐるぐる巻きになった。
辺り一面が元通りになると、アポロニアが縁に駆け寄る。
それを見て風月達も近寄ってきた。
「申し訳ございません縁先生、この馬鹿の代わりに謝罪いたします」
「挑発も才能だ、彼はいい所を突いたな」
地獄には様々罪人を裁く場所があり、一つの場所でも意味は複数ある。
極苦処とは好き勝手殺傷した者が落ちる、そして縁は昔妹を守る為に殺傷してきた。
つまり、好き勝手にお前は殺傷してきただろ? そう言われて縁はキレたのだ。
明らかに不機嫌な縁に、久城は目を輝かせている。
「縁先生、どうやって封印したんですか? 教えてください」
「久城さん興味あるかい?」
「神がする封印は中々見られませんから」
「対象者の縁を使った封印術だ、今の状況は彼の信用している人が魔法陣を触れば、この封印は解ける」
「逆も出来るという事ですか?」
「ああ、誰も触らないと思うけどな」
和気あいあいと解説をしていると、ぐるぐる巻きにされているダエワから悲痛な声が響く。
「ちょ! 封印解いてくれ!」
「おお! その状況でも喋れるのか! 凄いぞダエワ君!」
「縁、手加減したんでしょ? 」
「解除条件だけ、他は本気だ」
「って事は喋れるって凄くない?」
「んな解説後でいいだろ!」
「アポロニア君、魔法陣に触れてくれ」
「はい」
アポロニアが魔法陣に触れる。
そうすると魔法陣も兎も赤い糸もスッと消えてなくなった。
ダエワは酷く疲れた顔をして、地面に寝そべっている。
「クソ! なんつー孤独感だ!」
「挑発とはお前は愚かだな、実力差を考えたか?」
「ハッ、どうせ涼しい顔されるなら言葉で一撃報いただけだ」
「ふむ、見事な挑発だ」
アポロニアは、してやったりと満足そうな顔をしているダエワを起こした。
「してダエワ君、まだやるかい?」
「止めとくよ、地獄の者がこれ以上力を使う訳にはいかねぇからな」
「ダエワ、恐らくは君の父上から何か言われるだろう」
「面倒くさい、怒られたくねぇー」
風月が縁をちょいちょいと肩を突いた。
「縁、何で怒られるの?」
「罪人を裁く技を現世で使うのはご法度さ」
「ああ~そう言われると納得、何か面倒くさそう」
「アポロニア君も同じ様な理由で無理だろう」
「太陽神の家系だから?」
「本人達と言うよりも周りだろうな」
「ああ~王様にいちいち口出しする大臣が多いって事?」
「そういう事だ、地位が高いってのは面倒くさいな」
「なるほどね~」
「俺は終わったから次だ次、アポロニアはやらねぇのか?」
「ああ」
「久城は?」
「私は戦う事に興味はありません」
「って事は一本槍の出番だな」
「僕ですか? ではどっちゃんにお願いがあります」
「ほう? なんだい?」
「あの時の加護を今一度貸してはいただけないでしょうか?」
一本槍の言葉にどっちゃんは眉をひそめた。