3人は教室へと戻って来て、縁達は教壇へ、サンディは教室の後ろに移動する。
「みんな、そろそろ授業始めるよ」
「あの、縁先生」
「どうした?」
「カミホンをタダで頂いて、よろしいのでしょうか?」
「ああ、使い方はバッチリか?」
「はい、本体に触った瞬間理解しました」
「よしよし、んでカミホンはタダでいいよ」
「本当にいいんですか?」
「自分を大事にしてくれるならな」
「はい!」
一本槍の言葉に続いて他の生徒達が頷いた。
「では神と加護について話をするか……んじゃバッサリというとな? 姿を現す神様なんて位が低いから? 敬う必要は無い」
「え゛!?」
開幕縁の言葉に生徒達が驚いた、縁も姿を現す神様だ。
実力を知っている生徒達からみれば、自分自身が位の低い神と言ってる縁の言葉に驚くのも当然。
「この言い方は語弊があったな、姿を見せる神様は神としての位が低いんだ、ただある程度のマナーや常識を持って接してくれ、礼がなってない神は無視していい」
「縁先生も低いんですか?」
「高位の神になればなるほど、姿も見せれないし、名も名乗れない」
「どうしてですか?」
「色々な理由がある、天変地異を起こしてしまったり、いらぬ争いを起こしたり、早い話が面倒くさい事が起こるんだ」
「でも縁先生で位が低いってどういう事っすか? 凄まじい力を持っているのに」
「神の位は認知度、信仰心、簡単に言うと……商品だな」
「商品ですか?」
「どれだけ素晴らしい商品でも、よくわからない会社だったり、知っている人の人数が極端に少なかったらって話だな」
「確かに、何か怪しさを感じますね」
「有名だったりすると安心するだろ?」
「ブランド力ってやつですね」
「そ、で品質を一定に保つために、有名になった神は人前にあまりでなくなる」
水晶玉を頭に載せた未来が手を上げた。
「わかった縁先生、それは『神に失望させない』ためだ、あんだのこんだの好き勝手言って、信者が減り結果信仰心が減る」
「正解だ未来さん、人は好き勝手だからな……本当に」
縁は全てを恨む様な目をした。
スファーリアはそんな縁をジッと見る。
「縁君は居なくならない?」
「姿を隠さなきならないなんて相当上位の神だな、俺はそこまで上りつめたくない、てかならん」
「俺半端な死神っすけど、わかるっすよ? 縁先生って力だけなら上位の神に相当するんじゃ?」
「それは大切な人達が俺を信用しているからだ、信仰心は自分の力ではないし、威張り散らす歳でもないからな」
「へっ、スファーリア先生に嫌われたくないからだろ、お前昔は威張り散らしてたのに」
サンディがニヤニヤしながら小声でそう言った。
聞こえていたのか縁は微妙な顔をサンディに一瞬向ける。
「……だからまあ、威張り散らしてる神なんざ、底が知れてるのさ」
「縁先生、例外もありますよね?」
「ああ、それこそ大雑把に言うと、人間を始めて作った神とか、火を教えた神とかな、その位の神なら調子に乗っていいんじゃーね?」
「でもふんぞり返る神に私は清き一票はいれたくない、占いでもそう出ている」
「だから、神なんて全然偉くもねーんだ、みんなも変な神に声をかけられたら、俺に相談するように」
「はーい、と、言ったものの何でですか? 縁先生? 神とか信者が勧誘してくるんですか?」
「ああ、そうだ、じゃあ次は加護について話そうか」
「縁先生、加護はもしかして布教活動の一環なんですか?」
「大体がそうだな」
「縁先生は加護を授けたりするんですか?」
一本槍の質問に縁はウサミミカチューシャを外した。
何時もの神様モードになり、高位の神の立ち振る舞いを感じさせる。
「努力しない種に幸運は訪れない、真っ当な対価を払い、身の丈にあった自分の力で幸せになるがいい」
生徒達は普段出さない高位な雰囲気に圧倒されていた。
縁はそれだけ言うとウサミミカチューシャを付けて、普段の姿になる。
「うわ~あの縁がすげーまともな神様やってるよ」
「……何度も言ってるかもしれないが、何でもかんでも神様がやってくれるなんざ、裏があるに決まってるから気を付けろよ?」
また茶々をいれるサンディを無視して、縁は話を進める。
「今の感じだと縁先生加護は与えない方向性なんですね?」
「ああ、人の技で十分だ、人知を超えた力なんて必要ない、ただ、敵が神の力だとか禁止された物や術を使ってくるなら……話は別になる」
「はい、殺し合いで四の五の言ってられません」
「人の手に溢れた力が欲しければ、それ相応の心技体が必要だ、覚悟もな」
「覚悟ですか?」
「例えば名も無き一般人が世界を破滅させる力を持って、私はこの力を使用しませんっても賛否両論だろ、否の方が多いかもな」
「確かにそうですね」
「面倒くさいのは、地位があってもグチグチ言われる事だ」
「どういう事ですか?」
「ハッ! 勇者が魔王を倒した後に、勇者が世界の脅威になるから消そうって奴らも居るって話さ」
吐き捨てる様に大声でそう言ったサンディ。
目や雰囲気から殺意が溢れている。
「どうしたんだサンディ? えらくブチギレてるが」
「シーナ先生のクラスを卒業して、英雄になった生徒がそういう扱いを受けたの」
「どこも同じか」
「まあ、私が全て黙らせたが」
「先生が荒事していいのか?」
「てかスファーリア先生、戦闘科の先生ってほぼ現役が多いよな?」
「そうね、私も絶滅演奏者として色々と活動してるし」
「……この学校大丈夫かよ」
縁は呆れていると、スッと真面目な顔になりカミホンを鞄から取り出した。
簡単な会話をした後、カミホンを鞄へとししまう。
「絆ちゃんから?」
「ああ、神社で待っててくれとさ」
「それじゃ行きましょう」
「サンディ、後は頼んだ」
「はいよ」
縁とスファーリアはその場から消え、後ろに居たサンディが教壇にたった。
「んじゃ、続きは私が色々と話してやろう」
サンディはニコニコしながらチョークを持った。