第232話 二人でぽかぽかお風呂1

 由那と一緒に入浴することが決定し、ひとまず先に俺は浴室へと向かった。


 脱衣所で服を脱ぎ、水着に着替える。そういえば由那は水着なんて持ってきているのか、と疑問に思う人もいるかもしれないが。どうやら俺専用水着だけはこの家に置いていたようで。たまに「それどこから出したんだ?」となる状況が多い由那だが、やはりこの家のどこかに私物を潜ませまくっているのだろうか。


「にしても、結局押し切られたな……」


 なんでこう、由那の頼みとなるといつもいつも断れないのか。どうしても″あの目″をされてしまうと、断るという選択肢がスッと心から消えてしまう。彼女の望みを叶えてあげたいと身体が動いてしまうのだ。


 だが、やっぱりまずかっただろうか。改めて考えてみると由那と二人きりで入浴なんて。……思春期男子にはやはり中々辛いものがあるというか。


「まあ考えても仕方ない、か」


 いい加減覚悟を決めるか、と。俺は水着姿で風呂場に入り湯船にお湯を入れ始める。


 そしてシャワーの前にある小さな椅子に座り、待つこと数分。半透明な扉の向こうに何やら薄らと人影が。


「ゆ、ゆーし? 入っても……いい?」


「おう……」


 ガラガラ、と小さな音を立てひょっこりと顔だけを見せてから。由那は恥ずかしそうに浴室へと入ってくる。


 俺専用の水着。黒のビキニに半透明なジャージを羽織るというこの前見たスタイルとは違い、今回はビキニのみ。


 真っ白な髪と肌に対比するようなそれはきゅっと引き締まった由那の身体を、どこか大人のように見せる。顔も性格も子供っぽい彼女だがその溢れんばかりのたわわとくびれた腰つきは、視界に入れただけで俺の感情を昂らせた。


「うぅ、どうしよ。すっごくドキドキしてるよ。えへへ、久しぶりに着たけどちゃんと似合ってる、かな?」


「ああ、めちゃくちゃ似合ってる。由那のくせにちょっと大人っぽくて。死ぬほど可愛いぞ」


「むっ。私のくせにって言い方ひどい。私だってもう子供じゃないもん」


「ごめんて。分かってるよ。ちょっと甘えんぼで一日中ひっついてくるけど、子供じゃないもんな」


「それ本当に分かってるの? もぉ、いっつも子供扱いして!」


 いやいや、そんなことないですよ多分。少なくとも今は由那を子供っぽくなんかこれっぽっちも見る事はできないですね。


 相変わらず本当に高校一年生かと思うほどに立派なものをお持ちで。身長もむしろ小さい方だというのに、何故この部分だけは本当に大人なのか。やっぱり改めて由那は女の子としての破壊力がありすぎるな。


「私の大人なところ……いっぱい見せつけるもん。魅力的で可愛いお嫁さんになれるよう、頑張るもん……」


「? 何か言ったか?」


「へっ!? な、なんでもないよ! それより早くシャワー浴びよ? いくら夏でもこんな格好でずっといたら風邪ひいちゃう!」


「お、おう?」


 ブツブツと何かを呟いていた気がするのだが。結局それは聞き取れずに、シャワーに手をかける。


 温度は四十二度。最初は手にかけて適当に水も含めながら温度を調節して、浴びれるちょうどいい熱さへ。


「って、どっちから先に浴びるんだ? というか片方が浴びてるの待ってたらそれこそ風邪ひくぞ」


「さ、先に浴びるのはやっぱりゆーしからで。じゃあ私、ゆーしが頭洗ってる間湯船に浸かっててもいい? 背中は絶対に私が流すから!!」


「そーだな。じゃあそうするか。とりあえずサッと頭洗っとく」


 流石に何もかも由那に洗ってもらっていては、なんだか介護みたいな絵面になりそうだしな。それに了承した俺はとりあえずシャンプーを泡立てて、頭を洗い始める。





 その後ろでかけ湯をしてから湯船に浸かった由那は……何やらウズウズとした目で、ずっとこちらを見つめていた。