きっと、今日はまだまだ二人きりで落ち着いた時間は取れないと思うから。キスが出来るのは文化祭が終わってからだと思っていたけれど。
思いがけない二人きりになれる機会。星に照らされ、誰にも見られない空間に置かれながら寝転がる俺たちの気持ちは、昂っていく。
「ん……ちぅ……」
目を閉じ顔を差し出して来た彼女の唇を、ゆっくりと奪う。
甘い匂いが充満していくと共に、柔らかく心地の良い感触が走る。より強く唇を押し付けると、彼女の細い身体がピクンッ、と反応して、微かに色っぽい声が漏れ出した。
「は、ぁ。はぁ……っ。もっと、くっつきたいよぉ。ぎゅっ、してもいい?」
「え? いい、けど。覆われてるの頭だけだから、人に見られるかもしれないぞ?」
「……でも、ガマンできない。イチャイチャハグしながらのキスの方が、気持ちいいもん……」
脚と脚が、絡み合う。
誰が見ても明らかに抱き合っている体勢。左手は二人の胸の前で繋ぎ、由那の右手は俺の背中に。俺の右手は由那の首元に。
もぞもぞ、と小さく動いて一番密着できる形を探しながら、キスを繰り返す。
幸いここは雰囲気作りの名目もあり、教室全体が暗い。目が慣れていても注意しなければ寝転がっているお客さんたちを平気で踏んづけてしまいかねないくらいの暗さだ。
でも多分……ここまでしてしまっていれば、近くを通った人には必ず気づかれてしまう。キスをしていることはバレなくても、抱き合ってイチャイチャしていることは。
ただそんな理由で止まれるほど、俺たちは理性的じゃない。
「好き……好きっ。しゅきぃ……っ」
とろとろに溶け、身体をたっぷりと火照らせながら見つめ合う。
一度キスをして離れたとしてもその先には、大好きな人の蕩けた顔。それが視界に入ってしまうとまた繋がりたいという気持ちが高鳴って、行為に及んでしまう。
一種の永久機関だ。こうなってくるともう理性では止められない。本能のまま、大好きな人を求めることで頭がいっぱいになり、思考が止まってしまうから。
「ゆー、しぃ……お腹、ぽかぽかになっちゃった♡ なでなで……シて?」
「……分かった」
甘えるような猫撫で声を出してくる彼女には逆らえず、繋いでいた左手を解いてお腹に向ける。
流石に、こんな体勢で直接服の中をまさぐると周りに見られた時″そういうこと″をしていると思われかねないから。ブレザーの上から、優しくお腹をなでなでする。
「んっ、直接がいぃ……ゆーしのあったかい手で直接、なでなでしてほしぃよぉ……っ」
「〜〜っ。流石に、ダメだって」
「おね、がい。お腹うずうずしてて、よしよしされたいって。あつあつほかほかになっちゃってるんだよぉ……?」
ああ、もう。本当にコイツは。
流石にこんな状況でも、ここで流されちゃいけないことくらいは分かってる。もし見られたら周りにはあらぬ誤解をされるかもしれないし、変な噂が立つかも。
けど……ここで引き下がれるような俺なら、苦労していない。
「ったく。本当、仕方のないワガママ彼女さんだな……」
結局簡単に折れてしまった俺は、ブレザーの下のシャツの、更に下。絹のように白くお餅のような柔らかい肌へと、触れて。
「……ひにゃぁ♡」
熱々の湯たんぽ状態なお腹を、摩り始めたのだった。