「ふぃ〜。お腹膨らんで眠くなってきちゃったよぉ」
「寝ててもいいぞ。シフト前になったら叩き起こすけどな」
「う゛っ。それはヤダ……」
少し分厚めのカツサンドを食べながら、俺の肩にもたれかかって寝ようとしていた由那にそう告げる。
でも確かに、本当に心地のいい場所だ。ここにベンチがあってこうやってくつろげるのは今日限定のことだが、出来ることならずっと設置しておいてほしい。二人きりの教室もいいけれど、たまにはこういう開放的な場所でご飯を食べるというのも乙なものだろう。
眺めていられるものはせいぜい風に揺れる木々か鯉が自由に泳ぎ回る池くらいのもの。でも、それくらいがちょうどよくくつろいでいられる。まさに癒しの空間を体現したかのような感じだ。自分の家の庭に池を作るお金持ちの気持ちが少しだけ分かった気がする。
「ここ、本当気持ちいいね。私ずっといられるかも」
「さっきまで寝そうになってたくらいだもんなぁ。まあでも、気持ちはめちゃくちゃ分かる」
「えへへ、ゆーしもちょっとおねむ?」
「ば、バレてたか。正直段々瞼が重くなってきてる……」
「だ〜めだよっ。どっちも寝ちゃったらクラスのみんなに迷惑かけちゃうもん」
「ちょ、おいっ。何してんだお前」
もぞもぞ、と何やら動き出した由那は長いベンチを利用して上手く横になると、俺の膝の上に頭を置いて転がる。
横向きになり顔を俺のへそ下あたりに埋めてぐりぐり擦り付けてから、離れて。じぃ、とこちらを見つめて微笑みかけてくる。
「ゆーしは私を甘やかす係で、私は甘やかされる係っ。もしゆーしが寝ちゃいそうになってたら私がたくさん甘えちゃうから、私が寝そうになってたらいっぱいなでなでして起こしてね♡ これなら、二人同時に寝ちゃったりなんてしないでしょぉ」
「っ……なんだよ、それ」
「あ〜っ、ゆーしの膝の上、居心地良すぎて寝ちゃいそうだなぁ。起こして欲しいなぁ……チラッ、チラッ」
「……お前、さてはなでなでされたいだけだろ」
「気のせいだにゃあ♡」
「ったく。可愛いから許す」
「ごろごろごろ……」
膝の上で猫と化してしまった彼女さんを撫で回す。
ごろんごろんと身体が反転して仰向けになると、不意にたわわが揺れて思わず反射的に視線を向けてしまう。
相変わらず、セーターの上からでもはっきりと分かるサイズ感だ。本人は撫でられることに必死で俺を誘惑してしまっていることに気づきもしていないだろうが、こっちは心を揺さぶられてばかり。本当にこの生き物はなんというか……ズルい。
と、邪なことを考えてしまう脳みそを誤魔化すかのように撫でる方に集中しようとしたその時。由那は両手で俺の左手を掴むと、それを顔の横に持ってきて愛おしそうに頬擦りする。
「ゆーしの手、あったかぁい。好き……もっといっぱい、触って欲しい……」
「…………へっ!?」
そして爆弾発言と共に。じ〜っ、と期待の眼差しを、向けてくるのだった。