場末のダウンタウンのバスケのコートは、いつもひとけがなくて、僕の絶好の練習場だった。
一人で練習するにはちょっと物足りなかったけれど、バスケの基礎を自己流でやっていた。
「ようよう!ちょっとだけここを貸してくれないか?」
年上のハイスクールの三人組が急にやってきた。
「ちょっとだけなら…」
僕はコートのすみっこのベンチでボールを抱きしめて待っていた。
「ここって、穴場じゃん?今度からここ使うか?」
三人組は勝手なことを言っていた。
「ここは、僕のコートだ!」
僕は頭に血が上って叫んだ。
「なんだと?クソガキ」
一人が僕の胸ぐらを掴んだ。いかんせん、僕はまだ骨格もしっかりしてない「ガキ」だったし、勝ち目はなかった。
「兄さんたち、そのぐらいにしといてやれよ」
コートの外からフェンス越しに誰かが言った。
「なにおぅ?」
「まあ、待て。あいつ、リチャードだぜ」
「出来のいいサムの弟か?」
「ああ」
三人組はやけにあっさりコートから出ていった。
「よう!兄弟。怪我はないか?」
「う、うん」
「いつも一人なのか?」
「そうだよ」
「ふうん…」
リチャードは僕とコートを見て何か考えていた。
「あのさ、練習、一緒にしないか?」
「えっ?」
「ワンオンワン。相手を出し抜く練習。一人じゃできんだろ?」
「僕なんか相手でいいの?」
「何をおっしゃる」
それから小一時間二人っきりで練習をした。
「脇が甘いな」
「ほれ、右だぜ」
翻弄されてると思うと腹が立って、やる気が出た。
「俺、もう行かなきゃ。お前才能あるぜ」
ひょいとボールを投げてよこすと、リチャードは立ち去ろうとした。
「僕、君には負けないから!」
「!。アハハハ」
いつまでもリチャードの笑い声が響いていた。