僕の名はシン。
学校にあがって、気がついたときには、もうリチャードがいた。
2つ年上のリチャードは学業もスポーツも特待生並で、僕だけじゃない、みんなの憧れの先輩だった。
いつか、リチャードみたいになりたい。
幼心にそうずっと思ってきたんだ。
「シン!今度のバスケの試合見に行く?」
残念ながらメンバーに選ばれなかった僕はふてくされていたが、幼なじみのライラから声をかけられて、気を取り直した。
「行くよ!決まってんじゃん。リチャードが出るんだぜ」
ライラはそれを聞くと肩をすくめて「またリチャード?」と言った。
「悪いかい?」
「いいええ!」
明らかに不服そうだった。
「あなたが一人で練習頑張ってたの、なんでみんなわかんないかなぁ?」
「僕以上にみんなが頑張ってるんだよ」
ライラは僕に優しい。
でもその優しさに甘えちゃいけない。本物の栄冠を勝ち取るには、それ相応の努力と運が必要だった。
「僕が一人でやってたこと、みんなには内緒、な」
「えー?」
「じゃなきゃ、お尻の蒙古斑のことばらしちゃうぜ」
「あれは、もう消えちゃったわよ!」
赤面して、ライラが自分のお尻を隠す仕草をした。
「3歳のときのこと持ち出さないで!」
「とにかく、内緒。わかった?」
「うん、もう」
仕方ないな、とライラは呟いた。