☆2☆
春の植木市に母と行った。
枝振りの良い松の盆栽とかさまざまな植物がところ狭しと並んでいたけれど、私は翡翠とか瑪瑙とか水晶とかの小さい石ころを売っているところとか、でっかい錦鯉のいるブルーシートの水槽のところとか、民芸品を扱っているところとかに興味があった。
母は椿とかを見たいらしく、私に500円玉を持たせて、後で植木市会場の入口で待ち合わせしようと言った。
民芸品売り場で南京玉簾とかヨーヨーとかけんだまなんかを一生懸命見ていたら、孫の手の近くに耳かきが売ってあった。
梵天じゃなくて、小さなコケシみたいなものがついているのがあった。一個ずつ顔の表情が微妙に違う。首のところに赤や黄色の紐の飾りがついていた。
「これ、ください!」
気に入ったものを一個購入した。
家に帰ると、梵天がついた耳かきが何本かあった。それらと一緒にコケシつき耳かきを飾った。
「明美。これもかわいいけれど、梵天がついてるのの方が良いと思わない?」
「んー」
純白の鳥の羽毛の集まりはふんわり丸く広がっていた。
「きれいだね」
私は笑って言った。手触りもなんだか幸せな感じがした。
「コケシちゃんも、梵天のついてるのも、両方使う!」
「はいはい」
母は笑っていた。