「
「おう。俺の手にかかれば、筋金入りの仕事人間もとい仕事烏も一瞬でおねんねよ」
晴風から明け方に帰ってきたという
「いっしょにおねんねしてきたら?」
「ふぁっ!?」
「なにそれ面白そう。起きたら寝床に
「無言で悶えるんじゃないー?」
割り込んできたのは、黒皇の四番目、五番目、六番目の弟、
「こら。皇兄上と小慧であそぶんじゃない。それより、はやく
「ちぇ」
「はいはい」
「わかってまーす」
すぐさま、呆れたように
飄々と受け流して去ってゆく三つ子の兄を、黒慧はきょとんと見つめていた。
「さすが次男坊だな。ご苦労さん」
「……ほめ言葉としてお受けいたします」
真面目だが天然な兄と、わんぱくな弟たちにはさまれた黒俊だ。一番の苦労人はこいつかもな、と晴風は笑う。
「まったく……黒東たちにはああ言ったけど、おまえがそうしたいなら、皇兄上のお部屋に行ってもいいんだからね、小慧」
「でも、
「昨日は
幼い黒慧は、一番上の兄にとてもなついている。すこし前までは添い寝をせがんでいた。まだまだ甘えたい盛りなのだ。
黒皇が連日『おつとめ』に出ずっぱりで、さびしい思いをしていただろうことは、兄の黒俊だけでなく、晴風ですらわかるほどだ。
「
だからこそ、続く黒慧の発言に、その場にいただれもが目を点にした。
「急にどうした、
「ちがいますっ! 慧はわがままいいません!」
「じゃあどうしたんだ? 兄上っ子の小慧が……」
「えと……慧は、とおくまでとぼうとすると、くるしいし、おもいにもつをもつと、つかれます」
「まぁ、ちびっこだしなぁ」
「でも、皇あにうえは、くるしいのも、つかれるのもがまんして、がんばっておしごとをしてます。だから慧も、さびしいのをがまんして、がんばっておしごとします!」
「あらまぁ」
思わず、口もとを手でおおう晴風。
晴風がちらりと黒俊のほうを見やれば、眉間をおさえて天をあおいでいた。
「皇兄上……小慧が、わたしたちの弟が、尊いです……」
そうだった。こいつも弟に弱かったんだ、と晴風は思い出す。というより、
これが
「泣くなって、
「泣いてません。目にごみが入っただけです」
すん……と真顔にもどるさまは、黒皇とそっくりだ。さすが兄弟。
「じゃ、そういうことにしとくわ」
晴風の言葉が聞こえているのか、いないのか。
会話についてこれていない黒慧を抱き上げた黒俊が、目線を合わせて破顔する。
「もうじき宴だ。お客さまをおむかえしようね、小慧」
ぱちくり。ひとつまばたきをした黒慧の黄金の瞳が、かがやきを増す。
「はいっ!」