第2話 計画的犯行



ミレイユと志織は高校の同級生だった。


再会を果たしたということで盛り上がり、フードコートで4人でお茶をする。



「二人旅♡♡いいわね〜、楽しそう」


「オレたちだって、二人旅みたいなもんだろ」


「ちょっと違うわ」


眉をよせるミレイユを不服そうに見るルフィー



「なに?カップルじゃないの?」


すかさずカンナは問いかける



「(///ω///) まだ、そんなんじゃねぇよ」


ルフィーは照れくさそうに言う


「まだ???」

これから進展しようって感じのところか?


「全然、そんなんじゃないわ!」


ミレイユは追い討ちをかけるようにバッサリと切り捨てた。


カンナは2人を交互に見る


なるほど、この二人、温度差があるわ。


ルフィーは確実に気があるっぽいけど、ミレイユは その気ゼロ?


「ふーん」(面白い)


面白い気持ちがふーんに出すぎているカンナ


「カンナは、ルフィーみたいなのタイプでしょ、どーせ!」


志織が小声で耳打ちしてくる


「?」

どーせってなんだろう?もちろんタイプだけど。どーせっていうのが気になる



「それで、あなたたちは付き合ってるの?」


ミレイユが突然、攻めてきた。


「ううん、友達」


カンナはお決まりの返事をかえす。


たいがいの相手には、わざわざ付き合ってるとは言わない。


いや本当に付き合ってないし。


特に相手がカップルでない場合、こっちは120% フリーだと答える。


場がしらけないための配慮というやつよ、ぅふふふ


まあ今は、場がシラケないためというより、ルフィーを手に入れたいがためと言えるけど、とカンナはほくそ笑む



「そうなのね♡♡」


ミレイユもかなり露骨に嬉しそうで、もう志織しか見えていないようだ。


ルフィーはそれを感じてか、面白くなさそうな表情をしている。



「みんなフリーってことね!」


これはなんだか、本当に面白くなりそうだ、とカンナは思う。


「今日は、湯山のどこかに泊まるの?」


ミレイユは攻撃の手をゆるめずに、ガンガン攻めてくる。


カンナとシオリは顔を見合わした。


まだ何も決めてなかったから、それこそそうするのか?どうするのか?


お互いに確認し合っているようなもんだった。



「まだ 何も決めてない💦 今回ウチら4日も休みが取れたから、旅をする事にしたんだけど。このまま走ってもいいし、疲れたら、その辺のどこかに泊まるとか? 」



志織が言いながらカンナを見る。



「そんな感じらしい」(^_^;)


こいつは本当に走る事しか頭にない‪

今日も早朝からバカのようにブンブン飛ばして ほとんど休憩ナシ。


志織はバイクレーサーになる夢を捨てきれず、小さなモータースで働きながら、ずっとバイクにお金をつぎ込んでいる。


それが、結局のところ、別れる原因にもなったというのに、いつまでたっても子供なのだ。


カンナは苦笑い



「ええ〜、そんな、せっかくいい温泉場に来たのに? 」



ミレイユは声を張る



「温泉なら今、入ったし!」


鈍感な志織がヘラヘラ笑っている。


「…‪💧‬」

そうまったく、女心というものが分かってない。

これだから私に捨てられるのだ、とカンナは小さくため息をつく。



「そうだけど、もっと!もっと、いいとこいっぱいあるのよっっ 湯巡りスタンプラリーもあるんだから 」



バックから小冊子を出してシオリにみせるミレイユ



「随分、詳しいね、ミレイユって今、こっちの方に住んでるの?」



「ううん、レイラの、あ、友達のお家がリフォームするから、そのお手伝いにきたの」



「レイラ? 待って、聞いたことある!竜崎レイラでしょ!黒龍院のおっかない顔した人!」



「ふふん、確かに」



ずっとつまらなそうにそっぽを向いていたルフィーが振り返って笑う。


(その笑顔がまた最高♡♡ ヤバすぎる)


カンナはついつい見とれてしまう


「覚えてたの?」


ミレイユが目をぱちぱち


「そりゃあの人、有名だもん。転校生の私でもすぐ覚えたよ、いつも騒ぎの中心ていうか、さ 」


「懐かしいわね、あの頃」



何かを思い出すように、うっとりした表情のミレイユ


「へー、シオリの高校時代かぁ、聞いた事なかったなぁ」


(私の知らない世界、そこに2人は入り込んでいってるようだ)


ふとルフィーを見ると、シラけた顔を向けている



「あんたもおんなじ学校?」

「んなわけねぇだろ 」


喋るのも面倒くさそうに答えるルフィー


「だよね」

顔は可愛いのに性格は本当に可愛くない。


どうやって落としてやろうか…


カンナは爪を噛む


ミレイユとシオリは、ただくだらない思い出話しをしているだけで、なかなか話しが進展しそうにない。


「 それで、ミレイユたちはそのレイラの家に泊まってるわけ? そういえば、なんかこの辺の公園か河原で蛍が見られるんだってね、知ってた?」


カンナはミレイユの手助けをしてやることにした。


「 あ、蛍の宴でしょ、知ってるわ!自然公園の中のとっても美しい川に、夜、光る蛍が見れるらしいの︎💕︎✨ とっても とっても幻想的で癒されるんですって」


やーん、志織と見たいわー♡



「えー、そうなん?みたぁい!」


カンナも子猫のような目で横にいる志織に振り返る



「マジで?ホタルなんか興味あった?」


あるわけが無い、蛍なんかどーでもいい。知ってるでしょ、そのくらい。


「あるよ、ロマンチックじゃん」


「えーカンナ、マジでいってんの?」


「あたしだってたまには、そういう旅したいよ、走りっぱなしじゃなくてさ」



これでどうだ!決めてやっただろう!とカンナの瞳が輝いた。



「あー、そういうこと、じゃ行く?」


「うん、行こう行こう!みんなでいこう!」


ちょろいね。一応、走りっぱなしの罪悪感とかあるのかね。


(私はただ この向かいに座る生意気な女に興味があるだけ)


「ええ︎💕︎✨ そうね! 私も蛍見たいし、みんなで行ったらきっと楽しいわ。ね、ルフィー」


ミレイユもキラキラとした瞳で、ルフィーの腕をもちもちと触っている


ネコって生まれながらの悪魔だね〜、

カンナはニヤリ


照れるルフィーは目をそらす


「オレはいいけど、リュウレイラが待ってんじゃねぇの?」


「大丈夫よ、レイラにはクレインがいるし、遅くなるって電話しておけばいいわ」


「クスッ」

かなり適当で笑える。


ミレイユもシオリをモノにしようと考えているようだ。


それじゃ話が早いじゃないか、2人で仲良く手を組もう!キラーン


カンナは嬉しすぎてゾクゾクした。


「じゃ志織、どこかホテルだけ決めちゃおうよ、この辺で泊まり決定でしょ?」


押しの一手だ!


「あー、そうか」


シオリは、スマホを取り出した


「ねぇ、待って、じゃ一緒に藤谷に行かない?」


「藤谷?」


「レイラのお家よ、ほらレイラにも久しぶりだし、会わせたいわ!きっと懐かしがるわよ😊🎶」


ミレイユとカンナは自然に目を合わせる


「んー‪💧‬」


「へー楽しそう」


志織は なるべく無駄なところに金は使いたくない派だった。


バイクに注ぎ込みたいからね。


だから出かけても、たいがいが走りまくって温泉だけ入って帰るという日帰りプランなのだ。


だから、これは絶対 願ってもないお誘いのはず。


カンナは色々と思い巡らせながら、頬杖ついてシオリとミレイユを眺めている。



「でも流石にそれは悪くない?」


遠慮がちにミレイユを見る志織


「そんな事ないわよ、決まった予定がないなら是非来て欲しいわ!」


ミレイユは波に乗る


「 ほら、家の片付けしてるなら、手伝いは多いほうがいいんじゃない?宿泊のお礼はお手伝いで返せば?」


カンナ、トドメの一発だ!


「そんなんでいいのかなぁ💦」


「ええ!それは凄く喜ぶとおもう、是非来て、片付けのお手伝いしてあげて欲しいわ」


「 じゃ泊まらせてもらおうか?」


「うん、そうさせてもらおう♪」


もちろん、シオリの問いに秒で答えるカンナ



突然降って湧いたロマンスの旅だ。



(やったー!楽しいお休みになりそう♪)


カンナの心は小躍りする


「おい、おい、リュウに断りもなしにいいいのかよ」


面白くないのはルフィーだけ。


今夜はミレイユとの甘い夜でも想像していたか、気の毒な敗北者。


「平気よ、レイラはユキホや他に誰か来たいって人がいたら、連れてきていいって言ってたもの、人手がいるからだと思うわ」



ケロッと言うミレイユを、数秒 見つめる事しか出来ないルフィー、悲壮感たっぷりだ。



「じゃ連絡だけしとけよ‪💧‬ 」



露骨に嫌そうな表情で立ち上がる


「どこいくの?」



ルフィーは、タバコを見せるとそのままフロアを出ていってしまうが、ミレイユは明らかに どうでも良さそうだ。


気の毒だが、もう志織しか見えていない。


これは高校時代、相当 惚れ込んでいた事が伺えるな。


「うふ、楽しい」


つい喜びが声にでるカンナ


「ねぇ、なんかお腹すかない?」



「そうね、どっかで夕ご飯でも食べてたら暗くなって、蛍も見頃になるんじゃないかしら?」



「 じゃルフィーを呼んでくるから、2人でいいとこ決めといてよ」


(あたし達気が合いそうだね(*^^*))


カンナは色んな策略を頭の中で巡らせて、楽しくて楽しくて仕方なかった。