第2話

「君も勇者にならないか!


 最近猛威を振るっている魔物の侵攻をくいとめるのに、君の力が必要だ!


 勇者になったら今後の生活の全てを保障する!

 これまでの経歴も一切関係なし!


 腕に自信のある者なら、山賊や犯罪者も誰でも構わない!


 わが国を守るために魔物と戦おうではないか!


 勇者になりたい者はいつでも募集している。

 王都宮殿一階、勇者の間にて待つ。


 テレジア王国 国王ニクラス一世」 


 何の前触れもなく、テレジア王国の全国各地にこのような看板が立てられるようになった。


 ここ数年、魔物による被害は増えていく一方だった。


 魔物によって畑の作物は食い荒らされ、夜中に街道を歩けば襲われる。追い払っても集団で抵抗してくるし、仮に倒したとしても次の日にはまた同じような魔物が現れて同じことを繰り返すのだ。


 各都市は、魔物の侵入を防ぐために周囲を塀で囲みはじめた。入り口には兵士を配置し、門番に当たらせるようになった。


 おかげで魔物が町の中までは入ってくることはなくなったが、人々はその対策に疲弊しきっていた。


 王国の西の国境になっている暗黒山脈を越えると、魔物が主に生息する魔の森が広がっている。


 暗黒山脈は険しい山々が幾つも連なっており、熟練の登山者でなければ越えることは不可能に近い。

 しかも、越えたとしても何があるわけでもなく魔物たちの巣に向かうだけとなれば、近づこうとするものもいなかった。


 本来なら魔物たちはその森から出てくることはなかったのだが、ここ数年、山脈を越えて王国内に進入することが増えてきたのだった。


 この御触れが出たことによりやっと国として本格的な魔物対策に取り組むのだと民は安堵した。

 また、 「勇者になることで今後の生活が保障される」という文言は腕に自信のある者にとって魅力的な内容だった。