「私の人生、ずっと戦ってきた。だが、未だ空手とは、という問いに答えを見出せない」
武術界で尊敬を込めて”龍皇りゅうおう”と呼ばれる久米颯玄くめそうげんは言った。
今、颯玄は一人、人里離れた祠ほこらの中にいて、目を閉じ、禅を組んでいる。そこには何もない。中は昼なのに薄暗く、ろうそくが1本あるだけだった。
外には穏やかな風が吹いている。空には雲一つない。
穏やかな中で颯玄は自身に対して問い掛けている。それは幼い時の記憶をたどりながらだった。