第12話 竜人娘の武器職人

 クラリスが俺とアンナの傷を治癒魔法で手当てした後、結局デニールたちはアンナの提案で人目につく場所へ置いていくことに。


 俺も襲撃を目の当たりにしたときはビビったけど、二人とも案外落ち着いていたな。


 アンナはともかく最初は戸惑っていたクラリスも、すぐに落ち着きを取り戻したのが意外というかこれが異世界の常識なのか。


「それじゃあ改めて帰ろうか」

「そうだね。早く依頼も達成しなくっちゃ」


 二人とも切り替え早いなあ!?


 こうして俺はクラリスのボストンバッグに入って、二人と一緒に町へ帰ることになった。


 町に入る前に布を身体に羽織ったクラリスとアンナは、まず依頼の達成報告をしにギルドへ足を運ぶ。


「お帰りなさいませ! ……おや、その格好は……」


 出迎えたリコッタさんが二人の格好にほんの少し哀れみの表情を見せると、アンナがスライムコアの詰まった布袋を提示した。


「そんなことはいいから、これで依頼の達成を頼む」

「は、はい。分かりました。鑑定しますので少々お待ちください」


 虫眼鏡みたいなのでスライムコアを吟味するリコッタさんは、すぐににっこりと笑う。


「はい、確かにスライムコアですね。これで依頼は達成です、お疲れさまでした」


 そうしてリコッタさんが二人の差し出したカードに例のハンコを近づけると、ベージュ色だったカードが銅色に変化した。


「おめでとうございます、この依頼をもってお二人はDランクに昇格いたしました!」

「え、そうなの!? やった~!!」


 ランク昇格の報に、クラリスが豊満なおっぱいをたゆんたゆん揺らすように跳ねて大喜び。


 おお、こいつは眼福だぜ。


「Dランクに昇格したことにより、受けることのできる依頼のレベルも上がりました。これからも頑張ってくださいね。あとこちらが報酬です、お疲れさまでした」


 ニコニコと笑みを浮かべるリコッタさんから報酬の入った布袋を受け取って、クラリスたち二人は上機嫌でギルドを出た。


「やったねアンナちゃん! わたしたちこれでDランクだよ!」

「ああ、これでもっと報酬のいい依頼も受けられるな」


 なるほど、さっきリコッタさんが言ってたことも合わせるとやっぱり冒険者にもランクがあるんだな。

 こういう設定、ネット小説でもよくあった気がする。


 そんなことを考えていたら、クラリスがポンと手を叩いてこんなことを提案した。


「ねえねえアンナちゃん、この際だからダイナにも防具を作ってもらおうよ」

「防具、か?」

「うん! ダイナもわたしたちの立派な仲間だもん。さっきもそうだったけど、ダイナにもいい装備をつけてあげたいんだ」

「ふむ、そうか」


 目をキラキラさせるクラリスの言い分に、アンナもあごをなでて納得したみたいで。


 俺にも防具を用意してくれるなんて、やっぱクラリスは優しい娘だ。


「それなら私がいいところを知っている」

「ホント!?」

「ああ、この先に竜人族の娘が営む武器屋があってだな。今日はこんな格好だから、明日行ってみよう」

「わーい! やったねダイナ!」

「クカッ」


 そして翌日、俺たちはアンナの言う武器屋へ行くことに。


 この日はおめかしなのか二人ともいつもとは違った服装。


 クラリスは白いブラウスに紺色の吊りスカート、アンナはオフショルダーの青いシャツとベージュのスキニーパンツだ。


 この格好もそれぞれ二人に似合っていて、いいと思う。


「ほら、あそこだ」

「やっぱりずいぶん迷ったね……」


 アンナのとんちんかんな案内で散々迷った末に行き着いたちょうどその先に、こじんまりとした店が建っている。


 剣と盾を持ったドラゴンの看板、なんか異世界の武器屋って感じでいかしてるぜ!


 アンナとクラリスの二人に連れられて店の中に入ると、早速薄着にサロペットスカートを着ただけの少女が出迎えてくれる。


サラ・ドラゴリア

【竜人】


「いらっしゃい! ――ああっ、アンナさんじゃないっすか! いつもご贔屓してくれてありがとうっす」

「この子が竜人の……?」


 クラリスが目を丸くする通り、出迎えたサラという名前の少女はエルフとまた違う特徴を備えていた。


 健康的な褐色の肌で、手足を赤い鱗のようなものが覆っている。


 そして頭には三角形の黒い角が生えていて、背後には俺と同じような尻尾が。


 これが竜人……!


「おや、そちらは初めましてみたいっすね。ボクはサラ、しがない武器屋の店主っす」


 おおっ? まさかのボクっ娘か! 小説とかではたまに見たけど、実際に会うのは初めてだぜ。


「わたしはクラリスだよ、よろしくねサラちゃん」

「こちらこそっす」


 そう言ってクラリスと握手を交わしたサラは、続いてアンナに問いかける。


「それでアンナさん、今日はどういったご用件で?」

「ああ。実はなサラ、防具を作ってもらいたい仲間がいるんだ。――クラリスっ」

「うん。出ておいで、ダイナ」


 クラリスに促された俺がボストンバッグから身体を出すと、サラの目の色が変わった。


「はわわわわ……、かわいいっす~!」


「クケッ!?」


 そう言うなりサラに抱き上げられて、俺は思わず戸惑いの声をあげてしまう。


 クラリスたちより子供っぽい体型だと思ってたけど、やっぱり女の子って柔らかいなあ!?


 それになんか香ばしさの中にも清々しい女の子の香りまでするぜ。


「はっ、ボクとしたことがつい……! ごめんなさいっす、ビックリしたっすよね?」

「……クカ?」


 それってもしかして俺に言ってるのか?

 だとしたら俺は気にしてないぜ。


「クカッ」


 小首をかしげて気持ちを伝えようとすると、サラは俺の頭を優しくなでてくれた。


「君は優しいドラゴンの子みたいっすね~。いつかきっと立派なドラゴンになれるっすよ!」

「……クカ」


 お、おう。

 ……俺が目指してるのは人化からのハーレムコースなんだけどな。


 そう思いながらもなでなでされてまんざらでもない気持ちになってると、腕組みをしたアンナが改めて頼む。


「それでだサラ、私の剣のメンテナンスついでにこいつの防具を作ってほしいのだが」

「もちろんお安いご用っす! ボクが腕によりをかけてダイナきゅんにとっておきの防具をお作りするっす!!」


 ふんすと鼻息を吹き出すサラに、俺の防具を作ってもらえることになったようだ。