第8話 不良品のゲーム

最近のゲームは凄い。


VRっていう、まるでゲームの世界に入り込んだようなものまで出てきている。


CMで見てて、凄い欲しいと思ってたんだけど、最大の問題はお金がないことだ。


バイトを増やそうかと思ったけど、それだとそもそもゲームをやる時間がなくなる。


となれば、安く売っているものを買うしかない。


例え、多少壊れていようと、正規品じゃなくても、ゲームさえできればそれでいい。


ってことで、さっそく、ネットで購入した。


売ってたのは、物凄い怪しいサイトで、ゲーム機自体も、聞いたことのないような海外の会社が作っているものだ。


それでも、背に腹は代えられない。


とにかく、やれればいいんだ、やれれば。

では、念願のVRゲーム、開始!


だけどいきなり、バチンと音がして、画面が真っ暗になった。


なんだよ、まさか、いきなり壊れたのか?

くそ、せめて今日一日くらい持てよなー。


ため息を吐きながら、機器を取り外すと、部屋自体が真っ暗だった。


なんだよ。ブレーカーが落ちただけか。


俺は手探りゲームの電源を切り、ブレーカーの方へと向かった。




終わり。












■解説

ブレーカーが落ちたのなら、ゲームの電源も落ちているはずである。

そして、真っ暗な状態でわざわざゲームの電源を切ったということは、BGMは流れていたということが考えられる。


また、ゲームが起動しているのなら、わずかながらも、起動していることを示す、ランプがついているはず。


手探りで、と言っているところから、その小さなランプすら見えていないことになる。


つまり、目の前が真っ暗になったのは、ブレーカーが落ちたのではなく、語り部の目自体が光を失ったと考えることができる。