【Roster No.11@ウランバナ島南西部】

 車が強すぎる。強すぎて笑いが止まらん。下調べしてきてるから、強いのはわかっていたけどもね。それにしても強い。もう勝つしかない。勝つビジョンしか見えない。


 いい意味で計算外っしょ。……んーと、計算外っていい意味でも使っていいんだっけか。ま、こういうのはニュアンスさえ合ってればいいっしょ。気にすんのは国語のセンセぐらいなもん。


「同じ歌ばっかり流れんのも飽きてきた件」


 いい歌だけども、繰り返し聞きすぎてもう覚えちゃいましたわ。すまんなアラン。この戦いが終わったら他の曲も聞く。


「歌うか!」

「お、いいじゃん。アカペラカラオケ大会開催決定!」

「移動式カラオケボックスっ」


 いいじゃんいいじゃん。ハルアキの歌、好きなんだよね。アコースティックギターをかき鳴らしながら、よく歌ってくれたやつがいいな。どっかにアコギ落ちてない? アコギも殴れば鈍器になるっしょ。弦もそこそこ強度あるし、武器みたいなもんっしょ。


「実はビートボックスできるんだよね」

「マジィ?」

「ヒカキンの動画見て、練習してたらできるようになっちゃった。聞いて聞いて」


 ヨシマルがズンパッパとビートボックスもどきを始める。全然出来てなくて草。ヒカキンが聞いたら泣くぞ。


「できてねえー!」

「だよなー!」


 ガハハハハハ。車内大盛り上がり。こんなに楽しくていいんですか。いいんです。なんでも楽しんだもん勝ちっしょ。楽しんだ上で優勝、これ最強っしょ。

 そんな中でもシューコは「残り69人」とカウントダウンをしてくれている。好き。結婚するならシューコみたいな子がいい。


「おっ、また人がいるじゃんじゃん?」

「いるじゃんじゃん!」


 いま、轢きに行きます。一応こっちとしても? 交通ルール的に? クラクションは鳴らしておくっしょ。アクセル全開でね。


「ヤッバ」


 今回のお相手はこちらに銃口を向けてきた。あれは、そう、ミニミとかいう軽機関銃。バイポッド二脚を突き立てて、迎え撃つ気満々。


「どうすんの」

「突っ込む」

「マジ?」

「マジ」


 怯んだら負けっしょ。助手席は危ないから頭下げときましょうね。運転席も危ないけど、まあ、なんとかなるっしょ。

 地面に寝そべっちゃってさ。そこ道路なんだよね。道路に寝そべっちゃダメっしょ。


「あぶなあああああああああああああああああああああい!」


 ズドドドドドドドドと射出される5.56mmの弾はフロントガラスを叩き割るけども、それでも車は止まらないんだわ。ハンドルに左手は添えたまま、潜り込んでアクセルを押し続けた。背もたれの部分が穴だらけになっていく。


 <<ユウミ は 車 で ナオヤ を キルしました>>


「キルログ流れた」

「おっけ」


 シューコの報告、助かる。あたしは運転席に、ハルアキは「やれやれだぜ」と言いながら助手席に戻った。座り心地、悪い。これは乗り換えなきゃダメっしょ。


「なんかいるんだけど?」


 すっかりフロントガラスがなくなって視界良好。逆に見やすいってもんっしょ。んで、ハルアキは何を見つけたん?


「なんじゃありゃ」

「なんだろ。タヌキ?」


 置き物かな。クソでかいサイズのタヌキの置き物。信楽焼っていうんだっけか。ま、テーマパークになるらしいし、そういう謎のモニュメントがあってもおかしくはないっしょ。


「動いてね?」

「そんな、トトロじゃあるまいし」

「トトロいたもん!」


 微妙に似てるようで似てない。大人になると見えないっていうトトロさんがこんなところにいる? あたしたち、大人じゃなかったっけ。大人って何歳から?


「ま、タヌキだろうとトトロだろうと、車には勝てないっしょ」

「行くんか?」

「行っちゃいましょ」


 あたしはノリノリだけど、シューコは「やめたほうがいいと思う」と異を唱えた。まじか。シューコが言うならやめよっかな。


「えぇ、いいじゃん。トトロなら仲良くしたいし」

「トトロに車ごと体当たりで仲良くなれるかー?」

「ジャパニーズスモウコミュニケーションってやつ! タヌキもカッパも変わらんって!」

「それもそっか!」


 男二人はこんな調子。賛成が2、反対が1。それなら、行くしかないっしょ。


「未知との遭遇っしょ!」


 あたしはアクセルを今日一番の強さで踏み込んだ。全速力でタヌキに向かっていく。タヌキはこっちに気がついて、




【生存 64(+1)】【チーム 22】