それは見覚えのある女性だった。
黒いパーカーにえんじ色のスカート、肩まである天然パーマの髪の毛はリボンを使って後ろでまとめられていた。
少し幼さはあるけど、俺とそこまで年齢は変わらないような外見をしている。
「ユキナ=ブレメンテ、命の恩人よ……」
そう名乗り、彼女は不敵な笑みを浮かべた。
身元不明の人間に対して面会が来る。
そんな一大事であるにも関わらず、誰も彼女に対して特別な対応をする様子はなかった。
まるで俺とゆっくり会話できるよう
「ようやく会話できるようになったみたいだし、命の
彼女は何の断りもなくベッドの横に置かれた丸椅子に腰掛けた。
少なからず自らを知る可能性のある者が現れた事で俺は冷静さを欠いていた。
興奮しながらではあったが、自らが殺されそうになってから今に至るまでの話を語った。
◇ ◇ ◇
「――青みがかった髪の女の子に殺されかかった……? そしてその場には私と部活の
彼女は
当たり前だ、会ったこともない人間と会っていると言われ、
「私があなたと会ったのは、倒れていたあなたを医療機関へ手配した一度だけ……。それなのにあなたは少なくとも二度も私と出会っている……。それに、あなたが言っている顧問の教師と青髪の少女についても心当たりがあるわ……。でも、この世界にはまだ来た形跡がないから、偶然で言い当てられるものではないわ……。あなたは一体何を見てきたの……?」
「俺のことを知っているかと思ったけど……。いや、違うな。俺のことを助けてくれてありがとう、改めてお礼を言うよ」
しかし、だからといって何も解決はしていない、再び絶望が迫ってくる感覚に襲われる。
彼女はしばらく黙って
「――もしかしてだけど、あなた……。今日が何年何月何日か理解できているかしら……?」
彼女は不思議なことを聞いてきた。
「えっと……。俺が殺されかけたのが十一月で、そして今は一年経ってまた十一月になっている。数字が一つ増えるだけだから二〇XX年の十一月だろ? 何日かは……わからないけど」
「……! こんなことってあるのね……」
そう言いながら彼女はナースステーションから新聞を持ってきた。
そこに書いてある内容を見て驚愕した。
「わかるかしら……? あなたからしたらここは
その答えを聞いて、意識を失う直前に聞こえてきたヒカリの声が思い出される。
『――時は再び巡る。
みんなと出会うその前まで。
全てが始まりの時まで遡る。
だけど、時の旅路は生きている者しか歩めない』
俺は理解したが受け入れられなかった。
十年前、俺がヒカリと出会ったあの日から再びこの世界をやり直すということを……。