森を抜けやっと視界が開けたと思えばそこには小さな村があった。
「今日はあの村で寝るか…」
リーシャにそう伝えると村の奥を見る。
そこには男たちが暗闇の中、せっせと木材を運んでいるのが見えた。何か建造物でも作ってるのだろう。
(宿は…聞くのが速いか)
そう考えると近くを通りかかったサンダルの女性に尋ねた。
「すまない…宿を教えてくれないか?」
そう聞くと女性はこちらを向いて少し止まった後指で方向を教えてくれた。
「感謝する」
何やらおびえたような顔をしていたのは気のせいだろうか…女性はそそくさと行ってしまった。
その後ろ姿で気づいたことがあった。
「レン…」
どうやらシャーリも気づいたらしい。
「この村の女性…足の小指がない」
この村の女性はサンダルを履いている上に小指がないのだ。
【魔女】は体が損傷すると魔力を消費し再生する。故に魔女ではない証明があの小指なのだろう。
「なるべく長居はしたくないな」
シャーリも同じことを思っていたようで俺たちはそそくさと宿の方向に移動することにした。
――宿――
「1泊で」
宿屋の店主に情報収集もかねて倍の銀貨4枚を渡す。
「村の奥が騒がしかったようだけど何かあるのか?」
「ああ…明日この村で捕まえた魔女が処刑されるんだよ」
(また魔女狩りか…)
魔女は特別な力を持っているため、魔女専門の討伐部隊が教会を中心に編成された。それ以降、人間側が優勢を保ち続け魔女は隠れて過ごすしかないのだがたまにこうやって人間を襲った魔女が見せしめに処刑される。それが【魔女狩り】である。
「まぁ、この村は子指付きの時点で攻撃対象なんでな。魔女は早い段階であぶりだされるから安心だ…今回捕まった魔女も子供らしいぞ」
「そうか」
シャーリのほうを見るとかすかに首を振った。
「情報どうも」
「あいよ~カギは明日の昼までに返してくれよ」
簡単な例をすますと俺たちはカギについている番号の部屋に入り鍵を閉める。
しっかりカギが締まっているかを念入りに確認したのち俺は言葉を吐き出す。
「もういいぞ、シャーリ」
俺の言葉を聞いたシャーリから、黒い霧があふれ出す。黒い霧は【魔力】と呼ばれるもので、魔女の生命力であり力でもある。
「魔女狩り…嫌なフレーズだわ」
そう答えながら十字架の羽のようなものを身にまとい、魔力で黒い上着を作ったシャーリ
彼女はそのまま倒れこむようにベットに埋もれた。
「子供と言ってたし、引っかかることがあるわ」
そんなことをこぼすシャーリは【色欲の魔女】である。
「魔女の覚醒は力の弱いもののほうが速く、強いもののほうが遅い。それなのに子供をとらえるなんて…本当に人間を襲ってたのかしら」
不機嫌そうな声を出すシャーリ。
(どうやら明日様子を見に行くしか選択肢はなくなったみたいだな)
そう思い大きく伸びをした俺は同じようにベッドに倒れこむのだった。