シストルムは、振って音を出すラットル(打楽器)の一種です。持ち手の上にあるU字型の枠に金属製の横棒が入っており、シストルムを振ると横棒がスライドして音が鳴ります。横棒にはリングや輪が付けられる事もあります。儀式や祭など宗教的な場面でよく使われました。U字枠の部分にハトホル女神の顔が付いているナオス(聖堂)型の「セシェシェト型」(ナオス形シストルム)と簡素な形のU字枠を持つ「セケム型」(アーチ形シストルム)の2種類があります。
アーチ形シストルムは、焼き物の一種ファイアンスか、ブロンズでできています。ファイアンス製アーチ形シストルムの一例は、メトロポリタン美術館の公式サイトで写真付きで見られます:
17.190.1957、プトレマイオス
ブロンズ製アーチ形シストルムとしては、
https://www.britishmuseum.org/collection/object/Y_EA36310
ですがどちらかと言うと、ギリシャ・ローマ
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/545681
ナオス形シストルムの一例としては、同じくメトロポリタン美術館所蔵のもの(17.190.1959)があります:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/549513
このナオス形シストルムは、我らがトトメス3世の
同じようなナオス形シストルムを持つ彫像を本作にも登場するセンエンムウトが作らせています。センエンムウトは跪いており、身体の前にデフォルメされた大きなナオス形シストルムを持っています。そのような彫像がメトロポリタン
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/544469
https://www.bavarikon.de/object/bav:SMA-OBJ-00000BAV80011835?lang=en
(2)メニト
メニトは、ビーズを繋げたネックレスの束を板状の物でまとめた、何重連ものネックレスですが、振って音を鳴らす打楽器としても使われました。よくメナトとも呼ばれます。
トトメス3世の曾孫のアメンヘテプ3
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/544509
(3)まとめ
シストルムもメニトも楽器としては宗教的なコンテキストでのみ使われ、主に女性が演奏しました。シストルムは、神々と繋がったり、喜ばせたり、鎮めたりするのに用いられました。メニトも神々を鎮めるのに使われましたが、復活再生と生殖にも関連付いています。
シストルムとメニトには、よく一緒に用いられました。例えば、トトメス3世よりも150年ほど後の第19王朝セティ1世のために葬祭殿がエジプト南部アビドスに建造されたのですが、その壁面レリーフにもイシス女神がシストルムとメニトを同時に手に持っている描写があります。
そのイシス女神のレリーフは、下記のサイトの記事の1枚目の写真で見られます:
https://historicaleve.com/temple-of-seti-i-abydos/