ユリウスは静かに私の話を聞いてくれた。
全て話を終えるとふたりの間に静寂が訪れる。その静けさに不安と後悔が一気に押し寄せた。
前世の記憶が蘇ったなんて話を聞かされて、果たして信じられるだろうか。
突然何を言い出すんだ、気でも触れてしまったのではないか、と気味悪がるのが普通の反応では?
今ユリウスの顔を見るのが恐ろしく、私は深く俯く。
言うべきではなかった。貴方が離れてしまったら私は…
「辛かったですね…。」
ぽつりとそう呟くユリウス。
その言葉に顔を上げて、目を見開く。そこには私以上に悲痛に顔を歪ませる義弟の顔があったからだ。
「すみません。辛かったなんて、一言では片付けられないですよね…。」
「信じて、くれるの?」
「言ったでしょう?僕が姉上を信じないなんて有り得ない、と。」
じわじわと胸の辺りに温かいものがひろがる。
「ユーリ、ユーリっ。」
思わず、ベッドの傍らで膝をついたままのユリウスに抱き着く。そして、瞳からは堰を切ったように涙が溢れ出した。
「私は、ただあの人の傍に居たかっただけなのに…。どうして、とうして…。私の何がいけなかったのっ。」
「姉上は何も悪くないですよ、何も…。」
子供のように泣きじゃくる私の背中を慣れた手つきで優しく撫でる。泣き虫で甘ったれな私はこうしてよく義弟に慰められてきた。これではどっちが上なのか分からない。私はユリウスの姉なのに…。
「大丈夫ですよ。この世界に姉上を傷付けるものはありません。もし、あったとしても僕がそれらを摘み取って差し上げます。…だから、もう無理して頑張らなくて良いんですよ。」
「うっうっ。ユーリ、ユーリ…」
優しい慰めが傷付いた心に甘く染み渡る。しばらく私はユリウスを抱き締めながら泣き続けた。