「--っ!」
頑丈な扉を開くと、そこには辺り一面タイル状の壁に覆われた空間が広がっていた。
薄緑の光がタイルの縁に沿ってあちこちを動き、所々にはタイルが空中を浮遊している様子も見える。
「お待ちしてました」
幻想的な空間に思わず空宙は見惚れていると、白衣を着た女性に声を掛けられる。
「D-0037、架間空宙さんですね」
「あっ、はい」
白衣の女性は銀のアタッシュケースを持ちながら空宙に近づく。
「これより適性検査を行いますので、まずはこちらをお持ちください」
そう言うと、白衣の女性は手にしたアタッシュケースを開け、空宙の前に差し出す。
「こ、これは……?」
アタッシュケースの中にはゴルフボールほどの小さな水晶のような物が入っていた。透明な殻で覆われ、中では白と緑の煙が螺旋状に絡まり、静かに漂っている。
「こちらがエレマ体を起動する際に必要となるコアとなります」
「これが……」
空宙はまじまじとコアを眺める。
「このコアを持ちながら【
空宙は案内される通り荷物を置き、部屋の中心まで進む。
中心まで進むとそこには円形に囲われた土台があった。
「ではコアを持ち、円の中心までお入りください」
空宙は恐る恐るその中に入る。
「それでは、適性検査を行います。まずは、コアを自身の顔まで近づけ、【
空宙は言われた通り、手にしたコアを顔に近づけ、唱える。
―【
「っ!」
瞬間、持っていたコアが強く輝きだす。
続けて、球体だったコアは無数の粒子状となり空宙の身体に纏わる。
「す、すごい……」
粒子状となったコアが全て纏わると、先程のガイダンスでも見せられた物と同じ、モビルスーツのような形状に変わり、空宙の身体に装着されていた。中心には起動前のコアの大きさより一回り小さいコアが埋め込まれている。
「まずは装着完了です。おめでとうございます」
「これが、エレマ体……」
空宙は不思議な感覚に少し動揺しつつも、エレマ体に覆われた自身の身体をあちこちと確かめる。動き辛さはなく、事前に測ったかのように指先から足先までピッタリと装着されていた。
暫く観察していると、空宙は装着しているエレマ体に色が付いていない事に気付く。
「あ、あの、色が無色なのですが……」
「はい。ご指摘の通り今は無色の状態ですが、これより全種類のマナを中心のコアに一斉に注入し、空宙さんの適性を測ります。そこで色に変化があれば、変化後の色に該当するマナとの適性が判明され、空宙さんのエレマ体のタイプが決定されます」
白衣の女性は空宙の質問に答えながら黙々と作業を続けていく。
「ただし、コアに注入後、何も変化がなければ適性無しとなり、調査隊員には入隊不可となりますので、ご留意ください」
「は……はい」
妹の為に大学を辞めてまでここまで来た空宙にとっては是が非でも入隊しなければならないのだ。
「(それだけは勘弁してほしい……)」
どのタイプでもいいから色だけはついてくれと、心の中で強く懇願する。
「では、これよりコアにマナを注入します…………注入開始」
瞬間、空宙の足元を囲う円台が光り出し、同時に装着していたエレマ体のコアに4種類のマナが一気に注ぎ込まれる。
「--っ!!」
あまりの眩しさに空宙は咄嗟に目を閉じる。
心臓のほうが、徐々に熱くなっていく。
「(頼む……どうか色付きであってくれ)」
空宙は目を閉じながら、自身が入隊不可にならないよう祈り続けた。
その時。
――どうして
「ーーっ!?」
これまで聞き覚えの無い声が、空宙の頭の中で反響する。
空宙は慌てて目を開ける。
すると既に周囲の輝きは消え、熱くなっていたコアの温度も、常温へと収まっていた。
しかし。
「え……」
空宙は装着していたエレマ体を見ると、すぐに研究員たちの方を向く。
研究員たちも明らかに困惑している表情を空宙に向けていた。
空宙はもう一度自分のエレマ体の色を確認した。
その色は。
「銀……?」