紙飛行機で空を飛びたかった。
こんな夢を掲げたのは、いつだっただろうか。少なくとも、漢字や足し算を覚えるよりも前だ。物心がついたときには、既に思い描いていた夢のような気もする。五歳の頃には、僕はとっくに夢追い人だった。もっとも、五歳以前のことが思い出せないだけに過ぎないけど。
僕には大量の夢があった。入道雲を食べたかった。海をオレンジジュースにしたかった。悪を打ち砕くヒーローになりたかった。紙飛行機で空を飛びたかったのも、その一つ。
十二歳になった今、夢はほとんど諦めている。雲は水蒸気だから食べられない。海をジュースにするのは不可能だ。
ヒーローは、僕じゃなくたっていい。
小学校で、あらゆることを学んだ。知識を蓄えた。現実を知った。そのたびに、僕の夢は音を立てて砕けた。粉々になって、二度と戻らなくなった。
それでも、紙飛行機で空を飛びたかった。無理だと分かっていても、受け入れたくなかった。夢を諦めることで、現実に近付くのが怖かった。現実を知ることで、夢を忘れたくなかった。
大人になりたくなかった。子供のままでいたかったんだ。