第20話

「美味しい」レオさんはティーラが作ったポトフを褒め、たくさん食べてくれた。翌朝、残ったポトフにトマトとパスタを加え、ポトフトマトパスタにすると更に喜んでくれた。


「やっぱり、2人で食べる食事はいいね」


 ふつう雇い主とは食事しないのだけど、レオさんは一緒に食べようとティーラを誘う。ティーラもまた、1人の食事が多かったから、レオさんとの食事を楽しんだ。


(レオさんは何でも美味しいって食べてくれるから、たくさん作ってしまうわ)


 いつもの様に洗濯物をして、近くの町へと買い物に出ようとしたティーラを、ちょうど仕事から戻ったレオさんが呼び止めた。


「いまから買い物? 僕も一緒に行っていい?」

「はい、今日はハンバーグを作ろうと思います」

「ハンバーグ? それは楽しみだ」


 この夜、2人で大きなハンバーグを食べ、次の日は残ったハンバーグで、分厚いサンドイッチを作る。レオさんと楽しく笑い、食事をする。ティーラがここへ来て半年が経つ「……あ、私」ティーラは前のように、元婚約者のリオン君のことを考える日が、少なくなくなっていることに気付いた。




 今日はレオさんの仕事が休みの日。レオさんと馬車で30分のところにある街で月一に開かれている、古本市にきている。ティーラは露天に並ぶ料理の本、縫い物の本を選び。レオさんは薬草の本など仕事に必要な本のほかに、恋愛の本を数冊選んでいた。


(恋愛の本? あまり、読んだことがないわ)


 村にいた頃は毎日が忙しくて、本を読む暇もなかった。いまは眠る前に自分の時間がある。いつもは貰った洋服の尻尾穴を縫っているけど、たまに本を読むのもいいかもと思い、ティーラも露天をのぞき本を選らぼうとした。


「ティーラさん、その本は家にあるよ。そっちの本も」


 レオさんはたくさんの本を読むのか、ティーラが選ぶ本全て持っていた。なら恋愛の本はレオさんに借りればいいと、ティーラは刺繍の本を選んだ。


「今日の、夕飯は買って帰ろう」


 この街のパン屋により夕食と明日の朝食のパンも買い、馬車に揺られている。


(歩き疲れかな?)


 反対側でレオが買った本を大事に抱えて眠るティーラの姿に、レオは「可愛い」と呟き、またどこかにティーラと出掛けたいと思った。


(今度の休みは、近くの湖にピクニックへ誘おうかな?)


 どこに行こうか迷っているうちに、レオ達が乗る馬車は屋敷の前に止まった。まだ気持ちよさそうに眠るティーラを、レオはやさしく揺り起こす。


「ティーラさん、ティーラさん、屋敷についたよ」

「あ、は、はい……お、降ります」

「僕につかまって」

「すみません」


 ティーラが馬車を降りるとレオは、御者に話しかけた。


「ご苦労さま。これ少ないけど受け取って」

「料金は貰っているのに、いいのか? ……ありがとう、また必要な時は呼んでくれ」


「ああ、助かるよ」 

「ありがとうございました」


 慌ててティーラが礼を言うと、御者は微笑み御者席に乗り手をあげた。


「じゃ、また」

「またな」


 この日の御者はレオさんの知り合いの方だと、後で教えてもらった。