第16話:愛の力でドラゴンさんを倒すのよ♡。

 女神アフロディーテは天上界からその様子を見て、呆れたように独り言を放った。


「恭介と陽葵よ、そしてコレを書いているお馬鹿な物書きにも告げる。あまり過激になるな。18禁になるような過激な行動と表現を控えよ。悶えとエロは似て非なるものぞよ。」


 俺と陽葵、それに目の前にいたドラゴンは女神アフロディーテさまの独り言が聞こえたし、これを書いている作者と呼ばれる人物の心にも、その言葉がグサッと刺さっていた。


 そんな女神のぼやきが心に刺さっていた作者は考える。


『これは軌道修正しないとまずい。勢いが余って、2人が激しく愛し合っているの様子を具体的に書いてしまうと、18禁になってゾーニングやプロットが怪しくなるから危険だ。』


 そんな、お馬鹿な作者のぼやきは置いといて、陽葵は、女神アフロディーテの独り言を聞いて、少しだけ軌道修正をすることにした。


 顔を赤らめながら、俺に抱きつくように体を寄せて話しかけてくる。


「あなた♡。抱き合いながら、2人でお互いが大好きだと思うことを語り合いましょう♡。女神様は天上界から私たちの愛の姿を見て、庭を駆け巡って悶えて叫びながら、お力を行使するのよ。単なるエロでは動かないのよ♡。」


 俺はそれを聞いて頭を抱えた。

『それは、アフロディーテさまの聖癖(性癖とは言えない)が片寄っていないか?』


 その前に俺はドラゴンに向かって話しかけた。

「ドラゴンよ、今から全身が氷漬けになるが大丈夫か?。それと俺たちを見て悶えてしまうかも知れないが、それも大丈夫か?」


 ドラゴンは少しだけ考えていたようで、しばらくしてから、俺たちの精神に話しかけて俺の質問に答える。


「…そっ、それはかまわぬ。我は雌のドラゴンなので、その悶えは効くかもしれぬ。しかし…我はドラゴンだから耐えてみせよう。氷漬けなんて何とも思わぬが、長年にわたって独身である雌ドラゴンにとって、お前らが愛し合っていてイチャイチャしているのが辛い…。ほんとうに羨ましい。」


 俺はドラゴンが未だに独身だと聞いて、アフロディーテさまの受け皿を発動させて、天に向かって叫んで頼み込んだ。


「アフロディーテさま、この独身の雌ドラゴンに良き夫を探してください。このまま未来永劫、独身でこの場に置いとくのは、とても可哀想すぎます。」


 それを天上界で聞いていた女神アフロディーテは、椅子に座って左手で額を撫でるようにさすると、長い溜息をついた。そして、少しだけ目を閉じて、声を落として俺たちに向かって、観念したように言い放つ。


「…はぁ…。わかったわ。愛の女神でありながら、それを考慮に入れなかった私のミスだから、すぐに相手を探すわ…。」


 その女神の言葉は俺と陽葵、それにドラゴンにまで聞こえた。


「うほぉ~~♡、やっと1千年越しに彼氏ができる♡」


 ドラゴンは手放しで喜んでいるが、事態は一刻の猶予もない。

 この放置すればは、ドラゴンは呪い死んでしまう可能性が高いからだ。


 俺は陽葵を少し抱き寄せながら氷魔法の術式を展開する。

 陽葵を抱き寄せたのは特に意味がないが、もう、しばらく離ればなれになっていたのと同様なので、頭をなでながら、大好きな陽葵にチューをしたいのをこらえる為に抱き寄せただけだ。


 こんな大きなドラゴンを凍りづけにするのだから、相当な魔力が必要だし魔力の塊である女神の泉を凍らせたくなかったので細心の注意が必要だった。


 そうしてドラゴンに氷の術式を展開すると、まずはじめに、アフロディーテさまを陽葵の身体に降ろすために、陽葵と愛の言葉を交わすことにする。


 はじめに陽葵が、恥じらうように俺に話しかけてきた。


「あなた♡。スケルトンと戦ったときに久しぶりに剣を抜いて戦ったので、カッコよかったわ♡。もう今日の夜に抱かれてもかまわないぐらいにカッコよかったわ♡」


「俺は陽葵がいなくて寂しかったよ。やっぱりいないと寂しくて仕方がない。アフロディーテさまから解放された陽葵は可愛い陽葵だし、この可愛さは悶えるよね。マジに可愛くて仕方ない。もう今の恥じらいなんてすぐに抱いてしまいたいぐらい可愛いから、そのまま押し倒したい!!。」


 俺は陽葵にそう言うと頭をなでて、陽葵をギュッと抱き寄せた。


「生きて帰ってこられて嬉しいの。だって、あなたにズッと抱きしめられていたい。あなたが大好きなの。もう、このまま今夜は激しく抱かれたい♡」


 陽葵の目は完全にハートマークになっているが、俺は本能的な部分を堪えるので精一杯だ。


「ここでは、恥ずかしいから、これが限界だよ。俺はアフロディーテさまを召喚して、その体が崩壊しないか心配で仕方がなかった。俺にとって陽葵はかけがえのない存在だよ。陽葵がいなくなった世界なんて想像できない。アフロディーテさまが召喚した陽葵は、お人形のようだった。やっぱりね、陽葵は陽葵じゃないと駄目だよ。」


 俺の言葉に陽葵は俺の胸に顔をうずめている。

 そして、ジッと俺を見ると、陽葵は右手の人差し指で俺の頬を滑らせるように走らせて、軽くキスをした。


「天上界でアフロディーテさまと一緒に見ていて、2人で頑張れと声をかけていたのよ。あんな方法で剣が折れるなんて、わたしは思いもしなかったわよ。」


 そのイチャイチャの様子を見ていた氷漬けのドラゴンは、悶えの限界点を超えて、あまりにも強烈なシチュエーションに、悶えまくって思いっきり叫んだ。


「うぎゃぁぁ~~~、彼氏が欲しいぃ~~~。こんなのズルいわ!!。くやしいぃ~~~~!!!」


 そう叫んだドラゴンは、アフロディーテさまの力を借りることなく、悶えまくって横倒しになった。


 俺と陽葵は、イチャイチャをやめて慌ててドラゴンの様子を見ると、その瞬間、ドラゴンに刺さっていた魔剣が、砂のようにサラサラッと崩れるように消えて、ドラゴンの呪いが解ける。


 それを見て、慌ててドラゴンにかけていた氷の魔法の術式を解くと、呪いが解けたドラゴンが、俺と陽葵のほうを向いて話しかけてきた。


「人間の夫婦よ、わらわの呪いを解いてくれて有り難く思うぞ。しかし、アフロディーテさまのお力を借りることなく、わらわを倒すとは…。」


「ドラゴンよ、チョット待ってくれ。陽葵が中途半端にアフロディーテ様に干渉している状況だから、このままだと少しまずい。」


 横にいる陽葵を見ると、目が虚ろな状態だから、何も話せない状態だ。

 俺はアフロディーテさまから教えてもらった召喚技術を使って、陽葵の神気に少しだけ干渉して、アフロディーテさまの召喚を止める。


 未完成の召喚だったので、陽葵の精神はすぐに戻ったから俺は、安堵の上場を浮かべていた。


「あなた…。もしかして、ドラゴンさんは私たちのイチャラブで、自ら倒れてしまったの?」


「陽葵。そういうことだよ。だから、俺も陽葵も、まだ魔力が、かなり余っているから助かった…。」


 俺が陽葵の問いに答えると、陽葵は少しだけ不満げな表情をして、口を開く。


「もぉ、あと少しでアフロディーテさまを完全に悶えさせるところだったのに…。天上界でアフロディーテさまは消化不良気味で見ているわよ…。」


「陽葵、そういう問題ではない。このさい、アフロディーテさまの聖癖は頭の片隅にでも追いやってくれ。それよりも、俺の魔力を温存できたことによって、メリッサに、今からすぐにでも駆けつけることができる。」


「え?、あなた…、どういうこと?。」


 陽葵はそれを聞いて驚きを隠せない様子だ。


「俺はアフロディーテさまから、テレポーテーションを教わったんだ。それで完全に魔力を使い切るから、今夜はメリッサの周辺に着くだけで精一杯だけどね。」


 このドラゴンの谷は、メリッサからかなり遠い。

 普通に歩いてメリッサに向かえば、1週間はかかるだろう。


「アフロディーテ様から凄い術を教えて頂いたのね。でも、テレポーテーションって人間が使うのは禁忌だし、凄く魔力消費が凄いから何人もの術者がいないとダメだって、普通は思うわよね?」


「うん、だから、これを使ったら俺の魔力はスッカラカンだよ…」


 陽葵はポカンと口をあけていたが、俺は具体的にどこの場所にテレポーテーションをするかを思案していた。