レース開始直後私は思いっきりアクセルボタンを押す。
私の車はもうスピードで
「これであってるかな」
すぐに崖から落ちる。だが、脱落にはならない。
しばらくするとヘッドフォンからガタンという音がする。
「着地は成功…」
どうやら正解らしい。ただこれはレースだ。もし正面から走ってもクリアできる場合そのプレイヤーよりも早くつかなくちゃならない。
私はアクセルボタンから手を放さず、全速力でバックする。
(後ろは見えない…でも問題はない)
私はそのトンネルのような道をヘッドフォンから伝わる
トンネルのような細い道。そこに車のエンジン音が響く。
「反響音から道を特定すればいい」
私は自分の耳を頼りにハンドルを回す。
耐久力が低いこの車はこのスピードで壁にぶつけてしまえば瞬く間に破壊されるだろう。
(必要なのはノーミス)
バックミラーもないこのゲームにおいて音だけを頼りに狭い道を進むレース…
「面白い」
私は目をつむり画面を見ずに音だけに集中する。
かすかに違う音のこもり方…それを聞き分け進む。
レース特有の景色も疾走感もない。カーブの多いトンネルをスピードを出し進んでいく。
しばらく進んでいると音がこもらなくなってきた。
曲がりくねったトンネルをぬけ、広い場所に抜けたらしい。
それを確かめるべくハンドルを回し車を回転させ、目的地を黙視する。
ゴールと書かれたその場所はまだだれも到達していないようだ。それどころか自分の車以外のエンジン音が聞こえない。
「終わり…かな」
私は何事もなかったかのようにゴールテープを切った。