薄暗い部屋の中白髪の少女はパソコンと向き合う。お気に入りの動物の耳がついたヘッドフォンを付けキーボードをたたく。
「眠いな…」
少女は唐突につぶやくとそばにおいてあるエナジードリンクを手に取り飲み干す。
「例のイベントは午前0時開始…日付が変わった瞬間から勝負開始か」
少女はパソコンの時計とゲーム内のイベント告知メールを見比べながらつぶやく。
「イベントなんて…ガチでやるのは久しぶりかな」
少女は常に勝利数の全体ランキングでトップにいるいわゆる最上位ランカーといわれる存在である。故に対人戦と自身の強化に関すること以外は専門外。にもかかわらず今回はイベントという定期的に開かれるサイドクエストのようなものに挑戦しようとしている。こと【Second World】のイベントは初心者が古参勢に追いつくための救済措置のようなイベントが多い。古参のプレイヤーにとっては…まして最上位ランカーにとってはメリットは皆無に等しい。だが、今回のイベントだけは違った。
「あれはいつだったかな…」
白髪の少女、もとい私【
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【メッセージを受信しました】
それはあまりに突然のことだった。
『親愛なるプレイヤーの皆様。 Second Worldをプレイしただき誠にありがとうございます。
さて、今回の告知は非常に重要な要件となっております。
まず初めにSecond Worldの新規コンテンツ追加を次回アップデートをもって終了とさせていただきます。
長らくこのゲームを楽しんでいただけるよう運営一同尽力してはいましたが限界を感じたのが理由です。
そこで、次回アップデートにて過去最大級のイベントを開催することを決定いたしました。
イベント詳細
期間 次回アップデート以降~
目的 ゲーム内に追加される隠しアイテム
【赤のカギ】【青のカギ】【黄のカギ】【緑のカギ】【紫のカギ】【白のカギ】【黒のカギ】をそれぞれ入手すること。
商品 すべてのカギを入手したプレイヤー様にはこのゲームの運営権を譲渡いたします』
その商品は、私にとって魅力的な商品に見えた。
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ゲームの運営権。他のゲームならここまで本気になる必要はなかった。だがこのゲームの運営権というのはほかの運営権とはわけが違う。
このゲームはいわば運営の空想世界と呼んでも過言ではないほどの広大なフィールドにグラフィック。そして現実世界にあるものはこのゲーム内のコンテンツの劣化版とまで言えるほどで、食事以外をこのゲームで完結させる人も多い。このゲームが発売してから現実に生きる者が極端に減るほど、この世界はよくできている。
「絶対に私がクリアする」
そう決意した私はアップデート終了と同時、メール箱に届いた1件のメールを開いた。
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『親愛なるプレイヤーの皆様。お待たせしました。
どうぞイベントをお楽しみください』
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