――え、兎ちゃんは男の人?
いま庭園に集まっている、乙女ゲームの攻略対象のリチャード殿下達は、ヒロイン(男)の兎ちゃんと恋に落ちるのかしら?
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――ヒロインだもの、恋に落ちるのよね。
だって、獣化を解いた兎ちゃんは髪の色と瞳の色は同じで、見た目もヒロインに似ていた。
(瓜二つと言ってもいいくらい、乙女ゲームのヒロインに似ているわ)
私がジッと兎ちゃんを身過ぎていたようで、彼は慌てて頭を下げた。
「皆様、大切な形見の指輪を見つけていただき感謝いたします。僕の名前は兎族のリリネといいます」
兎族のリリネ……彼は家名を言わず、リリネとしか名乗らなかった。――あれ、ヒロインは男爵じゃないの? どうなっているの? 乙女ゲームと違い過ぎて驚く、私の横で話が続いた。
「そうか、君の名前はリリネと言うんだね。それでリリネ、その指輪を2度と外すなよ」
「は、はい、わかりました。……あの、リチャード殿下とミタリア様に折り入って話があるのですが、まだお時間はいいでしょうか?」
「時間はあるが、俺たちに話とは……?」
リチャード殿下が話を聞こうとしたが。
「あの、すみませんリチャード殿下。ここで話せる内容ではありませんので、場所を移動してもよろしいでしょうか?」
兎ちゃんはカーエン殿下を見て言った……となると、カーエン王子に聞かれてはならない、話を兎ちゃんははするつもりなのだろう。
「分かった、学園内にある俺の休憩室に移動しよう。カーエン殿下、彼の指輪を見つけてくれてありがとう、失礼する。ミタリア嬢、リリネ、リル移動するぞ……アラン、お前も着いて来い」
「かしこまりました」
私は、このアランの名前を聞いて驚いた。
それは彼も乙女ゲームの攻略対象だからだ。彼、アランは狼犬族でヒロインに恋をして、最後にリチャード殿下に決闘を申し込むキャラだった。
「――そうだ、ミタリア嬢に紹介がまだだったな。本日から、俺の近衛騎士となった伯爵家アラン・イエガーだ」
「よろしくお願いします。本日付けで、リチャード殿下の近衛騎士を務めることになりました――アラン、イエガーと言います。アランとお呼びください」
彼は胸に手を当て、騎士の挨拶をした。
私はスカートを持ち、会釈をして、
「はじめまして、リチャード様の婚約者のミタリア・アンブレラです、よろしくお願いします」
お互いに挨拶を交わした。
ちなみに2人の決闘の勝ち負けは、ヒロインとの好感度で決まる。このアラン様は黒髪、琥珀色の瞳。リチャード殿下の次にファンが多かった攻略対象だ。
その次は側近リル。まだ出てこない学年が1つ下のネズミ族の後輩……カーエン殿下って、余り人気なかった印象がある。
「カーエン王子、失礼する」
挨拶をして、カーエン殿下とは庭園で別れ、私たちはリチャード殿下の休憩室へと移動した。