Chapter7 - Story Epilogue


「ってコトで、まぁ今回馬鹿狐以外にも色々あったわけよ」

『昨日の今日でどういうメンタルしてるのだ貴様は……』


翌日。

私は図書館に行く前に『惑い霧の森』のボスエリアへと訪れ、『白霧の森狐』に対して一方的に話しかけていた。

というのも、本当に色々とあったのだ。

【羨望の蛇】や『神出鬼没』の2種ダンジョン。そして等級強化云々の話。

しっかりと話そうと思えば時間がいくらあっても足りないと言えるだろう。

特に、『瞬来の鼬鮫』の居た地底湖はそのままの光景を見せてやりたいと思うほどには良い景色だった。


「ここの話でいつまでも落ち込んでるわけないでしょ?糸を創っちゃったのは私だし、それを使う判断をしたのも私。もっと言えば、新しい魔術や新しい技術を使わないって判断をしたのも私。……まぁ今回は単純に、私自身が私を許せなかっただけの事なんだよ本当に」


事実、それだけの話。


「だから、正直気にしてるってよりは『次は絶対に自分が納得できる戦い方をしたい』ってくらいの評価なのよアレ」

『……そう、か』

「そうなの。っていうか、何よアレ。人化とか」


私の話はどうでもいい。いや、どうでも良くはないが一旦置いておいていい話だ。

それよりも気になるのは、馬鹿狐が人の姿になった事。

話の流れでスルーしていたものの、今思えばアレは相当にツッコむべき問題だろう。なんせ、


「巫女さんの事を考えると、アンタあの姿になればダンジョンの外に出たりできるんじゃないの?あの人結構ダンジョン内とか歩き回ってるよ?」

『……人の世界では、黙秘権というものがあるらしいな』

「こうやって一対一で話してる時にそれを言ったら自白してるようなものなんだよねぇ」


管理されているからなのか、それとも暴走しているわけではないからなのか。

私側には一切の警告などのログが流れた覚えは無いものの……どうやらこの馬鹿狐はいつの間にか街などに繰り出しているかもしれないらしい。

たまに呼んでも出てこない時があるとは思っていたが、そういう事情があったのだ。


「あ」

『……このタイミングでの何か思いついたような顔をされると、流石の我も嫌な予感がするのだが?』


1つ、良い事を思いついてしまった。

にやにやと、しかしながら少しだけ期待を込めた目を彼に向け、


「人の姿に成れるなら、今度どこか一緒に行こうよ。ほら【霧式単機関車】に乗ってさ」

『管理者が率先してボスを外に出そうとしてどうする……』

「勝手に出ていくボスも居るんで問題はありませーん。……まぁ最初は、『瞬来の鼬鮫』に皆で会いに行こうか。あの子、霧由来の能力持ってるわけじゃないから、うちのダンジョンで唯一孤立しちゃってるし」


まずはあの地底湖の景色を共に観に行こう。

新しいコンテンツの確認よりも、私は良い景色を見たいのだから。