『サプライズアクション第2弾!一定時間戦闘行動を取っていないプレイヤーに対して【侍従の毒】を強制付与!プレイヤーを倒さない限りは解除されない、HPとMP、敏捷ステータスを徐々に低下させるデバフだ!さぁ戦おう!』
それは、2つ目のサプライズアクション。
私はこれが来る前にフィッシュのキルを取ったからなのか付与はされなかったが……周囲からは悲鳴のような声が複数響き始めた。
それもそうだろう。今まで漁夫狙いで動いていたプレイヤー達ほぼ全てに付与されたであろう【侍従の毒】とやらは、解除しない限りHPとMP、そして敏捷ステータスを低下させるというのだ。
HPとMPだけならば手持ちの回復でなんとか対応できるプレイヤーは多いだろう。
しかしながら、ステータスを低下させるようなデバフに対してどう対応すればいいものか。
……魔術の説明を見る限り、結構ステータスを参照して効果を出してるのもあるし強力というか、いやらしいデバフだなぁ。
対して私は本当に暢気なものだ。これまでも私は戦闘行動自体はとっていた。
見かけた相手に対して遠くから【ラクエウス】を発動しちょっかいをかけてみたり、『水球の生成・射出』によって、それっぽい攻撃を仕掛ける事も出来る。
それにそもそも私に【侍従の毒】が付与されていないのが大きいだろう。
今まで通り、遠くから攻撃をしていれば戦闘行動としてみなされるのかは分からないが……それでも、まぁ信じるしかない。
残り人数を見てみれば、サプライズアクションの効果は出ているのか減りに減って残りは51人。
私以外にあと50人もいると考えると気が少し遠くなるが、その数も急速に減っていく。
【報せの鐘】、【侍従の毒】のダブルパンチのおかげだ。
【報せの鐘】を解除したいプレイヤーは、同じ鐘の鳴る方向へと移動する。
【侍従の毒】を解除したいプレイヤーは、当然居る場所が分かる鐘の鳴る方向へと移動する。
そうして起こるは複数人入り混じった乱戦だ。
私が一番苦手とし、回避してきているものが現在闘技場の各場所で起こっていた。
その火の手は私が現在居る場所にも伸びてきていた。
「さっきまでこの辺に誰かいたよなぁ?オラぁでてこい!【炎弾】!」
「チッ、危ないわねぇ……こっちは霧で苛々してるのよッ!【黒死斑の靄】!」
「おォ?良いじャねェか。俺も混ぜろッ!」
近くから声が響き、戦闘音が連続して聞こえ始めた。
その中の1つ。ゴスロリ少女らしき声が聞こえていたため、少しばかり私は距離を取る。
彼女の使った魔術は詳細が分からないが……それでも霧で出来た【霧狐】の前脚を触れただけで持っていったものだ。
迂闊に近づくべきではないだろうし、出来る限り敵対もしたくない。
だが、他の相手に関しては別だ。
【霧狐】に周囲を索敵させ、私と同じように潜んでいるプレイヤーがいないかを確かめさせたあと、自分でも周囲を見渡してから戦っているプレイヤーの方を見る。
1人はゴスロリ少女。先程見た時と同じように黒い気体を自身の周囲に展開している。
時折飛んできている火の玉らしきものを気体を使って防いでいるため、中々に性能が良い魔術なのだろう。
続いて、どうやって作ったのか知らないが、カウボーイ風の男性プレイヤー。
恐らくは馬の獣人族だろう。カウボーイが乗る側ではなく乗られる側になっているのはどうなのかと思うが……今は関係ない。
周囲に向かって指で何かを撃つような動作をすると共に周囲へと発射されている火の玉は、地面に当たると同時、火柱を発生させているのが見えてしまった。
それと共に、熱によって周囲の霧の濃度が下がっていく。
あのカウボーイは敵だ。私の霧を薄くするという地雷を踏んだ。
そして声をあげていたもう1人。
赤い鬣のような髪と赤い目。そしてどうやって作ったのか分からないが、金属製の大剣を担いでいる人族の男性プレイヤー。
何処かライオンを思わせる彼は、獰猛な笑みを浮かべながら周囲へとその赤い瞳を向けていた。
恐らくは霧を見通すことは出来ないのだろう。
その代わり、至近距離に近づくのはやめておいた方がよさそうだが。
私はその中の1人、カウボーイを注視し……魔術の宣言を行う。
「……【ラクエウス】」
「?!誰だ!?」
直後、カウボーイの周囲の霧が形を槍へと変え彼の身体を貫こうと射出されたが避けられる。
一瞬直撃したかと思ったが、その瞬間身体がぶれていたため、何かしらの回避系効果を持った魔術を持っていそうだ。
だが、これでいい。
私の役目はこれで終わりだ。
「そこかッ!」
赤髪大剣が嬉しそうに笑いながら、カウボーイの方へと……恐らく声のした方へと向かって大剣を振るう。
瞬間、風が巻き起こり小規模な竜巻が巻き起こり、カウボーイへと向かって進んでいく。
それに気が付いているのかいないのか、カウボーイは未だに周囲を見渡している。
しかしそこに横槍が入った。
あのゴスロリ少女だ。
丁度2人の間に入った彼女は、自身を覆うように……球体のように黒い気体を操った。
瞬間、竜巻と黒い気体のドームというべきものが激突し……黒い気体がその量を倍以上増やしながら竜巻を掻き消した。
まるで、竜巻を喰らったかのように。