第四十五話

村に戻った時には既に辺りは暗くなり始めていた。

ルーネに乗って、門の前にくると先ほどと同じ青年が欠伸と伸びをして立っていた。

気持ちよさそうに「んんー」と声を出して伸びていたが、少し目を開けるとルーネが立っていたので、

伸びていた状態から縮み「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」と叫び声を上げる。


「あっ、ヤーロさんお疲れ様です!」

アルージェがひょっこりと顔出すと、青年も落ち着きを取り戻し始める。


「びっくりさせないでくれよ!はぁ・・・また村の奴らに笑われる」


「村長さんに会いたいんだけど入っていい?」


「あぁ、好きにしてくれ、村長の家は一番奥の他のやつより大きいやつだからすぐにわかると思う」


青年にお礼をいい、そのまま村長の家を目指す。


「確かに、他の家に比べると大きいね、それに豪華な馬車も置いてあるあそこだろうね」


村長の家の玄関に立ち

「村長さーん」と叫ぶと優しそうなおばあちゃんが出てきた。


「あらあら、いらっしゃい、村の子じゃないわよね?」

「あっ、こんにちはアルージェです、村長さんに話があるんですけどいますか?」

「はいはい、ちょっと待っててね」


奥の方で話し声が聞こえてまたおばあちゃんが戻ってくる。

「中に入ってきてだそうよ、大きな狼ちゃんもどうぞー」


「あ、ありがとうございます!」

アルージェが頭を下げて入り、ルーネも頭を下げて入る。


「あらあら、お行儀のいい狼ちゃんねー」


奥に進むと村長が暖かそうな飲み物を啜っていた。

「おう、戻ってきたか、ヴァプンコヌングル遺跡はどうじゃった?」


「すごかったです!あんな綺麗に石を整えて、綺麗に積み上げられていて、どうやって作ったのか不思議で仕方なかったです!」


「そうかそうか、色々と説はあるんじゃが原初の魔道士様が作ったという説が濃厚らしいな」

「魔術師ではなくて魔道士ですか?」


「あぁ、そうじゃワシも詳しくは知らんが、魔術師は体内にある魔力とやら使って魔法を発動するらしいが、魔道士はそこらへんにある魔力を使って魔法を使うらしいぞ」


「へぇ、ならマナの満ちている場所だと魔法が際限なく使えるんですね」


「そうじゃな、あの遺跡のある場所はどうやらそのマナとやらが満ちている場所らしいからな、辺境伯様の娘が言っておったわ」


「へぇ、そうなんですねー!勉強になりました!」


「いやいやワシかて本当かどうかなんてわからんしな、それで今日寝るところはどうするんじゃ?」


「あぁ、どうするか考えてなかったです」


「そうか、ならどうせ辺境伯様の娘は今日も帰ってこんじゃろう今日はこの家に泊まりなさい、狼も村人が見ると驚くじゃろうし」


「わかりました、遺跡のことも少し気になるので今日は泊まらせてもらいます」

そういい銀貨を取り出すと、「村ではどうせ使えんから不要じゃよ」と言ってくれた。


「そうだ!もう一つ伝えたいことがあったんです!」


ヴァプンコヌングル遺跡で見た、状況を村長に説明した。


「ふむ、なるほど少し距離があるから問題ないとは思うが警戒しとくに越したことはないな、門番達に伝えておくわい」


「さて、難しい話が終わったならご飯にしましょうか」

優しそうなおばあちゃんが手際よくテーブルの上を片付けて、美味しそうなご飯が置かれた。


「おぉ、これはまた張り切ったなぁ」

「ふふふ、今日はお客さんがいるから張り切ってたくさん作ってしまったわ」


「うまそー!」「バウー!」

「それはよかったわ、たくさんあるからゆっくり食べてね」


村長と村長夫人はたくさん食べる二人の様子を微笑みながら見ていた。


ルーネも僕も満腹になるまでご飯をご馳走になり、村長さん宅の一室を借りたので

そこで、今後の方針について考えていた。


「やっぱり、稼ぎが安定してる、ラベックさんの依頼を受けて生活した方がいいのかなぁ、あそこの社員になったらかなり稼げると思うんだけどルーネはどう思う?」

ルーネはダメだと首を横に振りその意見を否定する。


「なら、ブロンズランクの依頼をコツコツとやっていくしかないよねぇ討伐依頼と採取依頼をまとめて効率よくできればいいんだけど、場所が噛み合ってないと厳しいんだよね」

「グルゥ」アルージェのいうことに確かに同意するように相槌を入れる。


「なら、僕が討伐してる間にルーネと別々で」

アルージェが新しい形を提案している時に地面が大きく揺れた。


棚などが倒れ、村の中で悲鳴上がる。

揺れは少しすると収まったが、村長さん達の様子を見に行く。


「村長さん!大丈夫ですか!?」

アルージェが叫ぶと「ワシらは大丈夫じゃよ」二人とも無事なようだ。


外で村人達が叫んでいるのが聞こえたので、アルージェとルーネは外に出る。


「なんだ・・・あれ・・・・」


そこには七色の大きな光の柱が天を穿つ、そんな大袈裟な表現が正しかった。


「あの方向はヴァプンコヌングル遺跡か?」村人の一人が呟く。

「あぁ確かに遺跡はあの辺りだったな」


アルージェも確認する、山の方向、確かに遺跡がある方向だった。

「ミスティさん!」


まだ、村に戻ってきていないミスティのことを思い出す。


「ルーネ!いこう!」

アルージェがルーネに跨ると、ルーネは最高速度で遺跡に走り始める。