超ブラックギルドのワンオペ職員が、ついに辞めた結果。ラディ異世界ファンタジー·冒険・バトル2024年08月18日公開日257,776文字連載中 大昔、世界に魔物なんてものが沸くようになった。
 魔物は人を食い荒らして、人は追い詰められていた。
 見かねた神様とやらが、人々へスキルやらステータスウインドウなんてのを与えて魔物への対抗策とした。
 そんなこんなで人々は魔物と戦い続け、それ自体が仕事になった。
 魔物討伐でも何でもやるやつらを、別に冒険なんてしてもないのに冒険者なんて呼んだ。
 国は冒険者を管理するために、ついでに納税してもらう為に冒険者ギルドを設立した。
 そんな世界で、ギルドの職員をする男。
 だが、男の働くギルドはブラックどころか超ブラック。
 ワンオペで働き続けた男はついに、辞めることにしたようだ。
 男が辞めたことによる影響、辞めた男の行動による影響。
 影響は伝播し様々な影響を生む。
 その伝播して行く影響の果てにある、結果とは。

※閲覧モードは原稿モードを推奨、縦組み横組みは両対応しています。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
プロローグ

 とりあえずこの世界について聞いてほしい。


 一旦ね。

 まあそれほど珍しい話でもないので聞き流してくれても構わない。


 この世界の人間は神より与えられた力として例外なく何らかのスキルというのが発現する。


 まあざっくりいえば、剣技の習得が常人より遥かに早く卓越した技量にまで至ることの出来る『剣聖』やら『剣豪』やら。


 あらゆる属性や等級の魔法を会得できてきわめることの出来る『賢者』やら『大魔道士』やら。


 他にも『錬金術師』やら『格闘者』やら『神官』やら『農家』やら『狩人』やら『歌手』やら『画家』やら、まあどんなもんかは字面から想像してくれ。大体その通りだ。


 これとは別に魔法ってのもある。


 魔力ってのが身体を通い、それを用いて魔法を使う。呪文を唱えたり唱えなかったりして火出したり水出したりするアレだ。


 人によって魔力の量だとか属性系統の素質で得手不得手はあって難しくて効果の高い魔法は等級も上がるが、一番低い等級の魔法は大体の人間が使える。


 さらに人間の力量や技量を数値化して確認が取れ出来るステータスウインドウが使用出来る。


 これは個々が云々というか世界の理というか、リンゴが木から落ちたり水に木が浮いたりするのと同じように、世界自体にあるシステムのようなもの。


 神がなぜそんなふうに世界を創り、人類に力を与えたかといえば。


 一重に、魔物の存在が理由であるとされる。


 動物とは違う区分で考えられる害獣というか、獰猛だしそこそこに知性もあったりする。

 魔力の影響で異形に進化した姿かたちで、数匹暴れ出すだけで小さな村なら滅んでしまうこともある。


 魔物は人を喰う。


 人類の繁栄や発展をさまたげる、最大の脅威だ。


 日々魔物からの被害をおさえる為に、人類は魔法や技術的な進歩を対魔物戦にかたよらせることになった。


 それがゆえに、どの国も単純な戦闘能力を有するスキルや強力な攻撃魔法が評価される世の中になった。


 そうなりゃ文明は発展しない、まあ世界規模きぼでいうなら人類は生存闘争真っ最中なのだから他を伸ばそうなんて余裕がないのはないっちゃ仕方ない。


 以前、異世界転生者から魔物がおらずスキルや魔法の無い異世界の文明発展度について聞いたことがあるが。

 この世界が、ティーンエイジャー向けの娯楽創作物で割とベタな設定とされる程度には余裕があり安全な世界らしい。


 確かに完全な安全領域から派手な魔法やわかりやすく数値化されたステータスなどは、見ている分には面白がれるのかもしれない。


 うらやましい限りだ。


 まあそんな異世界にも様々な国で資源やら物流やら信仰やら人種の差別やら、様々な理由で争いもあれば貧富の差もあるらしいけど。


 それらはほとんどが人のせいだ。


 この世界での問題は大抵、魔物のせいに出来るし、実際その通りの場合が多い。


 そう聞くと、この世界はその辺では多少楽を出来ているのかもしれない。


 まあ全然、資源や物流や信仰や種族差別での問題がないわけじゃないけど。結局どの国もどの人間も、手元で時間を使いたいし自分の身が可愛いのはどの世界も同じみたいだ。


 異世界の話を聞いて、いかにこの世界が思考停止してるなーって感じたのはスキルやらステータスウインドウやら魔法やらを、神があたえてくれたものとして現象としての解明を特に行ってないことだ。


 つーかマジで神とやらが居て、神とやらが人類に「魔物いるの大変だから世界に戦いやすくするシステムを追加したよー」ってやったんなら、そもそも魔物を生み出す世界をつくるなよって話になるので、全然に落ちねえ。まあ、じゃあ僕自身が解明に乗り出すか! なんてこともないのだけれど。


 まあ、はたから見てもわかりやすい図式になるし面白おかしく見えるのかもしれない。


 閑話休題。


 そんな世界なので、各国は国を上げて魔物対策を行っている。


 国防の為の軍隊も、他国との対人との戦闘より対魔物戦に重きを置いているところが多い。


 それ以外にも、対魔物で有用なスキルなどを持つ民間人を対魔物との戦闘を含む様々な依頼をこなす冒険者を選定しやとい入れるギルドの設立を行った。


 何を隠そう僕もギルド職員、しかも一応ギルド長である。


 まあ全然、もう辞めたいのだけれど。