第12話

陸からそう遠くはないが泳いで渡るにはチョット

ときどき参拝者を運ぶ漁船に乗せてもらう方法


ずいぶん荒れて見えるのは生い茂る草のせい

海からの眺めは最果ての無人島だけど

黒ずんだ桟橋に架ける板は細くしなって

飛び移るわけじゃないのに

よっ

と跳んだ気分でそおっと

降り立つ


ヤバイトコに来たかな

いつも思うけど

鳥居をくぐると

いつもキレイにされている


社殿のまわりは特別感があって

空気そのものが濃密だ

ごろっと置かれた岩の裂け目から

ゆっくり水が湧いている

天然づくしの手水を順番に

参拝の列が進む


目当ての場所は

ぐるっと裏

ずっと日陰で

なにもない


注意書きの看板が傾いていて

わざと誰かを招くように

風は吹く


なにもない日陰に目が慣れると

妙に石が多いことに気づく

どちらかといえば

砕けて散って尖ったタイプが多い

参拝者の氣に触れて岩が形を変えるからだ


意図的に割れば気も晴れる

景気づけに土師器を打ちつけるみたいに


拾いあげたとたんに願望の固まりに化ける

ほら

いま手にした小石は

おまえの心そのものだ


好きにするがいい

ここは結界の中

その手にした小石が

おまえの身代わりに滅ぶのさ



倒した木を組みあげて登れるように締めた

見た目がボロイ

触れればグラリ

頼りない展望台

いつもビクビクしながら上を目指せば

時間ぎりぎりで見える夕陽

圧倒的パノラマ