「ちゃんと確認して!? エクスカリパーじゃないよね? 濁音だよね!?」
「説明文からして本物だろ! ウルトラレアじゃねえ!?」
「うわあ……手応えは感じたけど、まさか自分がエクスカリバーをクラフトするとは思ってなかった……」
私と蓮と金沢さんはパニック状態になり、聖弥くんは顔色を白くして崩れ落ちた。
あ、人間、凄すぎる事態に遭遇すると、喜ぶより貧血起こすんですね。
「聖弥くん、装備装備! エクスカリバーって名前が大事なんじゃなくて、ステータス補正がどう掛かってるかが大事なんだよ!」
「そ、そうだね……」
聖弥くんは震える手でエクスカリバーを取り上げると、再びスマホを確認した。
そして、今度は妙な真顔。
なぁぜなぁぜ?
由井聖弥 LV8
HP 50/50(+130)
MP 14/14(+100)
STR 10(+67)
VIT 10(+67)
MAG 9(+66)
RST 11(+67)
DEX 11(+67)
AGI 9(+66)
装備 【エクスカリバー】
わあ。
これは。
酷い……。
草木も生えぬ……いや、草生えまくりの大平原。真っ平らな補正値が付くと誰が思っていたでしょうか!
そうかー、寝食を共にしたアポイタカラ、聖弥くんの器用貧……万能型勇者ステータスを「最大限に」活かす方向へ行っちゃったのかー。
「見たことない補正値の付き方をしてるね。……ぷっ」
金沢さんが震えながらフォローにならないことを言って、吹き出した。金沢さんですら見たことない付き方してるのか。
どんだけ器用貧乏追求する気なのかな、聖弥くんは。
「……まあ、いいんじゃねえ? 聖弥を体現したような武器だよ」
自分の名前が入っちゃってるロータスロッドを爆誕させた蓮が、そんなことを言って目を逸らす。
腹黒とはいえ、王子だからかな?
それとも、名前に「聖」が入ってるからかな?
「ちょっと自分でも、方向性に困り始めてきた。……でも、まだ盾があるのか。という事は防御型になるのかな?」
「そうだね、盾を作ってみよう」
金沢さん、ノリノリである! 置いてあったマジックポーションをぐいっと飲み干すと、もう一度手を洗ってきて今度は盾のクラフトを始めた。
これは、カイトシールドってやつかな。凧のような形をしてて、胸元から足の方まで守れる大きい盾。
縁と中央に描かれた十字が白くて、他の場所が青い。十字の真ん中には女性が描かれててかっこいい盾だね。
「鑑定鑑定!」
「う、うん……ええっ、これも!?」
これもって何!
【プリトウェン】アーサー王の盾。中央に聖母マリアが描かれている。魔法の船として使うこともできる(1人乗り)。
「聖弥くんは前世アーサー王なの?」
「注意書きが……ぶふっ」
私は宇宙猫になり、金沢さんは吹き出し、SE-RENのふたりは固まっている。
「ま、まあ、多分適性が剣と盾で、剣の方にエクスカリバーが来たから盾がそっちに寄ったという可能性が高いね。名前が残ってる盾というのはごく少ないから」
金沢さんが笑いながら解説してくれた。
確かに、盾ってあんまり知らないなあ。アイギスの盾くらいかな。
「――やべえ、魂飛んでた。聖弥、こっちも装備してみろ!」
「はっ、なんか、伝説が飽和状態ですっかり意識が。一旦エクスカリバーは置いて、と」
――そして、私と金沢さんは笑い崩れ、蓮と聖弥くんはぶっ倒れた。
「こんばんワンコー! Y
あまりに地味だったらお披露目配信しない予定だったんだけど、エクスカリバーは出さなきゃダメでしょということで、その日の夜に急遽お披露目配信をすることになった。
『ゆ~か、楽しそうだな』
『聖弥くんの武器どんなだろう』
『蓮くんの目が死んでるけど何があった』
「まあ、これを見てくださいよ! 聖弥くん、カモン!」
私が元気よくヘーイ! と腕を振ると、ちょっと生気が抜けた感じの聖弥くんが剣と盾を装備して入ってきた。
「えーと……今日、蓮とゆ~かちゃんの武器を作ってくれた金沢さんにクラフトして貰った僕の武器と盾です。剣と盾がセットでした」
『おお、西洋剣だ!』
『かっこいい!』
コメントが湧いているけど、名前を聞いたらもっと湧くよね!
私が後ろで「早く、早く」とワクワクしてるので、聖弥くんは何かを諦めたようにひとつため息をついてからカメラに向かって剣をかざす。
「この剣ですが、鑑定したら【エクスカリバー】でした。そしてこっちの盾は【プリトウェン】、アーサー王の剣と盾です」
『はぁあああああああ???????』
『エクスカリバー!!』
『伝説の剣来た』
物凄い盛り上がりを見せるコメント。降り注ぐスパチャのSE!
しかし、お楽しみはここからだよ!
「まずこれを見てください! これが聖弥くんの素のステータスです。ドン!」
スケッチブックに書いた勇者ステータスを見せると、コメントに困惑が混じり始める。
続いてエクスカリバーのステータス補正を見せると、困惑が『www』に取って代わられ始めた。
「そしてこれがとどめだ! 【プリトウェン】のステータス補正がこちら!」
HP 50/50(+130)
MP 14/14(+100)
STR 10(+66)
VIT 10(+67)
MAG 9(+66)
RST 11(+67)
DEX 11(+67)
AGI 9(+67)
『エクスカリバーと同じじゃねえかー!!』
『大平原!』
乱れ舞うツッコミの嵐! これだ! 私はこれが見たかった!!
「違うの! よく見ると違うの! +66の補正になってるのが、エクスカリバーはMAGとAGIで、プリトウェンはSTRとMAGなの! 一応プリトウェンの方が盾っぽい補正になってるの!」
『細かすぎてよくわからない選手権優勝』
誰かが私の気持ちを代弁してくれた。本当にそれですわ。見た瞬間笑うしかなかったもん、この数値。
「ちなみに、聖弥くんが私たちと同じ防具を装備して、エクスカリバーとプリトウェンを装備するとこうなります。ドドン!」
HP 50/50(+310)
MP 14/14(+300)
STR 10(+198)
VIT 10(+204)
MAG 9(+197)
RST 11(+204)
DEX 11(+199)
AGI 9(+198)
『なんこれ』
『………………』
『見たことないステータスの形』
『おお、勇者よ……』
なんと、フル装備の聖弥くんのステータスは、MPとMAGが蓮に負けてるけども、それ以外の数値は全てトップに踊り出てしまったのだ!
プリトウェンに補正がちゃんと入ったのが大きかったなあ。
だけど……。
『戦闘スタイルが全く見えない数値』
『剣でも魔法でも壁でもなんでもできるけど、何をやるべきか迷いそう』
それですわーーーー。