第二十三話 たのもしい助っ人

俺は、あずさのおかげでこの地に来る事が出来た。

この、ミサという女は、自分の力でここにいるということなのだろうか?


「ねえ、ミサさん、あなたはどうやってここへ来たのですか」


あずさが俺の疑問をミサにぶつけてくれた。

ミサは、あずさとは違い大人の女の魅力が強い女性だ。

まあ、言ってしまえば、フージコちゃーんみたいなタイプだ。

長いスカートに、大きく胸を開けたシャツを着ている。顔もまあ美人と言っても良いだろう。


「それは、あなた達と同じよ。私はテレポートと、バリア、テレキネシスそして、サイコメトリーにテレパシーが使える超能力者なの。あなたは何が出来るの」


「私はテレパシーや、サイコメトリーは出来ませんが、身体強化や収納が出来る超能力者です」


うわあ、あずさの奴、超能力者って言っている。

まあ、魔法も超能力の一種か。


「あなたは?」


「俺は、あんた達とは違ってたいしたことは出来ない。身体能力が少し高い事と、廃棄物を処理する能力くらいだ」


「そう、あれを見て」


くっ、全く興味の無い返事! いただきましたー!!


俺たちは今、隕石の表面の小高い丘の上にいる。

あずさが全体をよく見えるように、この場所を選んでくれたのだろう。

この隕石は隕石と言っても、惑星級の大きさで球形だ。球でも大きい為、地面は平らに感じる。ここからだと地平線も平らに見える。


ミサが指をさした場所を見ると、そこには小さな街ぐらいの大きさで、ほとんど透明のドームが見える。

その中にクレータの様にへこんだ場所がある。


「あれは、バリアね。すごく大きい」


あずさがつぶやいた。


「あのへこんでいる場所は?」


「あそこに、地球から来た超能力者がいるわ。半年かけてあれだけ、掘り進んだの」


「半年であれっぽっち」


あずさがつい感じたままを口にしてしまった。


「な、なんですってーー!! 皆がどれだけ頑張っていると思っているのーー!! 夜も寝ないで頑張っているんだからねっ!!!」


「す、すまない。だが、あれだと、あと半年では破壊できないと思うのだが」


「そ、そうよ。でも、やるしか無いじゃない。やり続けるしか……」


「とうさ……アンナメーダーマン、出来そうですか?」


「うむ、ギリギリだな。しかも、俺の中の蜂蜜さんがあまり乗り気じゃないんだ」


「ミサさん聞いた。ギリギリなのとうさんの邪魔はしないでね」


あずさ、アンナメーダーマン言い忘れているよ。


「はあーはっはっはっはっはー」


突然後ろから声がした。

バリアもつけないで、鋼鉄製の体に一杯毛がはえた狼の様な男が現れた。


「なんだこいつ」


「俺の名はアイアンファング、ここのリーダーをしている」


「すげー、空気もねえのに日本語でしゃべっている」


「馬鹿ねえ、私のテレパシーで直接心に翻訳して伝えているのよ。ついでにさっきの会話も、ここの皆に伝えているわ」


そうか、ミサはテレパシーが使えるって言っていたな。

まるで翻訳コン○ャクのような、奴だ。


「大きな口をたたいていたが、実力を見せてもらおう」


アイアンファングが俺に絡んできた。

俺は勝てるとは思えないので断ろうと思った。


「!?」


俺はさっき丘の上から見ていた、でかいドーム状のバリアの中に移動している。あずさの奴が移動魔法で飛ばした様だ。

正面にアイアンファングがいる。

キョロキョロあずさを探したら、俺の後ろで楽しそうに笑って立っている。


――おーーい! とうさんはピンチだぞー。


こんな恐ろしい奴に勝てるわけがねえ。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


「くそうー問答無用かよ!」


アイアンファングはいきなり襲いかかって来た。

大きな鉄の拳を固め、襲いかかって来た。

そして右手で強烈なパンチを出す。


――遅い。勝てそうだ!


俺は一歩前に出て避けた。


ビョオオオーーー


風が俺の顔の横を通り過ぎた。

このドームの中は空気がある様だ。

俺の後ろの、あずさのメイド服のスカートが風に巻き上げられる。

でも、安心して下さい。白い物が丸出しになりましたが、あれはパンツではありません。水着です。


俺は、体勢を崩しているアイアンファングの顔にキスするぐらいに近づき、ニヤリと笑ってやった。

そして、伸びきった右手をつかんだ。


ズウウウウーーーーンン


高校の、体育の必修授業で習った柔道の一本背負いを使った。

綺麗に決まった。

震度二ぐらいの地震の様に、ドームの中の大地が揺れた。

だが、アイアンファングはニヤリと笑う。タフだねえ。


しかし、俺はまだアイアンファングの右手を離していない。

持っている右手を、やってはいけない方向にねじり上げた。


「ぎええええええええええぇぇぇぇぇぇっーーーーーーー!!!!」


すごい大きな咆哮が、ドームの中に響き渡り、耳がグワングワンする。

ねじり上げられたアイアンファングの腕から、キンキンと限界まで重いものを吊り下げたワイヤーのような音がする。


「やめでーー!、やめでくださいーーー!!」


俺はパッと手を離した。

こいつ見た目の割に意外と弱かった。


「思い出した。アンナメーダーマン。聞いた事があると思っていたのよねー。あなた数年前、小学生をトラックから守った、あのアンナメーダーマンなのでしょ」


「ふふふ、いかにも、その正義のヒーローこそ、とうさ……コホン、アンナメーダーマンなのです」


「さすがね。強いはずよ! アイアンファングは、戦闘だけならここで一番強いのに、子供扱いとはおそれいったわ」


「うふふ」


あずさがすごく嬉しそうだ。


「皆、少し時間を頂戴。たのもしい助っ人が来てくれたわ」