第一章☆隆
「博士、カプセルの中に異物が混入しています」
「なに?そんなわけが……」
仁は博士の持っている瓶の中から一粒のカプセルをつまみだした。
赤と青を割り開くと、中に精密機器が入っていた。
「ワシは知らん!」
「だとすれば、他のカプセルを持ち逃げした助手の仕業って可能性もありますね」
仁はしばらく頭をめぐらせていた。
「博士、俺はちょっと時間移動します。」
「あ?ああ」
フィルムの巻き戻しみたいに頭の破裂した男がもとに戻り、割れたガラス窓が元通りになった。
博士は仁の作ったベーコンエッグを頬張ってもぐもぐやっている。
『おい!今からここへ来ると、お前がどうなるか予知してみろ』
仁はテレパシーで外にいるさっきの男に呼びかけた。男は驚きとともに、未来を吟味して、思いとどまった。
『話がある。ちゃんと玄関から入ってきてくれ』
『……わかった』
話せばわかるはずだ。仁はノックがすると、ドアのカギを開けて男を招き入れた。
「そのう、俺が悲惨な死に方をするのがわかってぞっとした」
「ああ。そうだね。とりあえず自己紹介。俺は仁」
「俺は隆」
「博士が言うには、隆の飲んだ薬の量が悪かったらしい」
「くそう。安全だって太鼓判押しやがったんだぜ」
「だったら、闘う理由辺りでもごまかされてる可能性があるな」
「そうか」
二人はそもそもなぜ闘わなければならなかったのか情報を出し合った。
現在台頭してきている勢力が表の顔と裏の顔を持っている。隆はそこのエージェントからスカウトされて、邪魔な仁と博士を抹殺するように言葉巧みに導かれた。
「裏の顔?……人体実験とか殺人ウィルスの開発とか」
「なんて奴らだ!表の顔では、人類に希望を与える技術開発をやってるって聞いたのに!」
「隆。よかったら俺たちの仲間になってくれないか?」
「喜んで!」
頼もしい味方が増えた。