57. 一緒に夕ご飯(2)


 引き続き、夕ご飯で情報もらってばっかりいるチームドングリです。


「カナヘビはパーティーで倒せます。オスウシは倒せましたが、まだキツめです」

「なるほど。じゃあ、あれだ。坑道行ったか?」

「行きましたよ。上層の地図を買って、鉄が出るあたりまでです」

「そうか。それより下に行くとな。実はダンジョンになってて、敵も出てくるんだ」

「知りませんでした」

「深くなるほど敵が強い。だから、レベル上げに丁度いいぞ。下の方いけばボスもいる」


 なんか、ネタバレほいほいみたいになってきた。


「というわけで、外の町に行きたければ、さっき言った飛空艇と、坑道ダンジョンボスを倒して領主に認めてもらって転移。それから湿地帯を突破して川下りだ」

「どれも面倒ですね」

「そうだな。まあ、無理することはない。まだ若いんだ。それと転移の許可は、領主に直接許可をもらった人に推薦してもらうこともできる。商人などへの対応だ」

「推薦いいですね」

「俺たちも転移できるが、1人につき基本3人までしか推薦ができない決まりだ。俺たちの分はもう使ってしまって残ってない。すまんな」

「いえいえ、とんでもないです」


 コネで推薦、簡単転移とは行かないようだ。


「あれ、死んだときの町での復活。セシルが3割減になるんだが、あれどういうことなのか知ってるか?」

「え、それは、ゴニョゴニョ(ゲームだからでは?)」


「実はな、あれは教会の施した呪いなんだ。セシルを取られる代わりに、復活するように、過去に巨大な魔法により神々と契約しているんだそうだ。だから代金は教会に振り込まれるんだ」

「へぇ、そういうものなんですね(設定のこじつけしゅごい)」

「お財布魔法だって、庶民は知らないと思うが、国家による広範囲魔法によるものなんだそうだぞ」

「ほぉほぉ」

「と言う訳で、お金は冒険者ギルドに預けておけば安心だ」


 教会というのは、この前行った例のウクレレ神とアクレレ神のところで、ツインスター教だ。


「忘れていた。こんな場所で悪いけど、君たちに称号を贈ろうと思う」

「称号ですか」

「そうだ。ま、とりあえず、ミケから、右手を胸の上まで上げて」


 学校で手を上げるときみたいに、向こう側に手のひらを見せて、それを胸の高さにする。


「騎士『ザイール』の名において、この者、名を『ミケ』に『初級冒険者・魔法』の称号を与えん」


 別に光るでもなく何でもなく変化がないように見えるが、ログを確認すると、確かに追加されていた。


「ありがとうございます」


 詳細を確認すると以下の通り。


 ●初級冒険者・魔法

  駆け出しの冒険者として認められたあかし。魔法使い用。

  種別:称号

  レア度:1

  魔攻力:3

  魔防力:1


 同じような文言で、クルミには「初級冒険者・攻撃」で「攻撃力+3、防御力+1」。サクラちゃんには「初級冒険者・防御」で「防御力+2。魔防力+2」を与えていた。


 それぞれお礼を言う。


「こういう、称号を与えるみたいなことは、誰でもできるのですか?」

「いや、師匠とか一定の地位の人などができることになっているが、実際にできるかは神様しだいだ」

「つまり、その人と神様の両方に認められる必要があって、不正はないと」

「その通りだ」

「この世界の神様は、結構働いてますね」

「ああ、見たことはないが、確かに仕事はする。勤勉だし、監視も怠らない」


 実際に神様、いわゆるGM、ゲームマスター、運営は、二十四時間私たちを監視下に置いて、不正、チート、犯罪などの監視業務をしているらしい。

 昔のゲームではRMTの交渉はゲーム外で行われ、ゲーム内でアイテムの譲渡だけ行われたりしていた。このゲームでも状況は同じだけど、譲渡の段階でAIによる監視にばれてつかまってしまうので、RMTなどの不正はしないように、とのことだそうだ。

 そういう訳で、MMOの暗黒面はかなりの部分で改善されている。一方で、がちがちの監視はプライバシーの侵害だとして、騒いでいる層もいるけれど、そういう人たちはそもそもベータテスターをやっていない外の人たちだったりする。

 AIたちは、中立、個人情報の保護などを徹底していて、一般的な喧嘩などは仲裁に入らない。普段の生活には不干渉を貫いているので、その存在を忘れそうになる。

 運営は膨大なAIの処理とサーバー処理をこなすため、データセンターに巨大な専用サーバーを抱えているそうだ。