雑貨屋から出たところで「警ら隊」のメンバーに捕まった。
捕まったといっても逮捕されたわけじゃないよ。
なんでも、フレンド登録していないので、朝から私たちを探し回っていたらしい。
アルクがさわやか笑顔で、挨拶したかと思うと、真剣な顔で語りかけてくる。
「探しましたよ。例のオオカミ、一緒に討伐しようと思いまして」
「人数は?」
「全部で9人。ミケさんたちと俺たちと、あとは白魔法使いとそのメイドです」
「メイドさん? AIとかじゃなくて、本職の?」
「はい。ちょっと知り合いまして。宿屋でジュース飲んで待ってます」
「露店さっと見ていっていい? 新アイテムとかあるかも」
「そうですね。ついていきます」
私たちは一緒になって、露店を回る。
ウサギの
プリン産の「錆びた銅の斧」があった。要相談、参考価格4,000セシルらしい。
簡単な形の寄木のキーホルダーを売っている人がいた。
木工ペンダントを見かけて、自分でも挑戦したらしい。
●寄木のキーホルダー
縞模様の寄木のキーホルダー。
種別:アクセサリー(キーホルダー)
レア度:4 ランク:2
攻撃力:1
魔攻力:1
命中:1
耐久:20/20
作成者:ダダンテ
お値段は3,000セシル。
色の違う木を並べて接着して、それをのこぎりで切って釘で紐に留めてある。
キーホルダーは小さいので、そこそこ数が揃っている。
ダダンテさん最初の作品だそうだ。
警ら隊は4人分、おまけしてもらい11,000セシルでお買い上げしていた。
露店を見終わって、宿屋に向かった。
そこには、椅子に座る9歳ぐらいの小さな女の子と、私たちより少し上の年齢の女性がいた。
女の子は膝の上に、30cmのぬいぐるみを抱えている。
茶色い猫かウサギかクマのどれかだ。
私たちは自己紹介をする。
「こちらはヒカリお嬢様。わたくしはメイドのコマチです」
「始めまして、ヒカリです。本名じゃないですよ。それで、こっちがウサギのマイケル」
ぬいぐるみはウサギさんだった。
ヒカリちゃんは、犬耳族で125cmぐらいのスレンダーボディーだ。
髪の毛は黄緑のツインテールにしていて、目は深い青だ。
ほっぺた、ぷにぷにで二重の丸顔をしている。
コマチさんは、ほっそりした顔だちのエルフで、肩より少し長いぐらいの赤い髪をポニーテールにしている。
あと、どう見ても、私たちよりおっぱいが大きい。
背丈も少し高い。
「マイケル見ていいよ」
ヒカリちゃんは、マイケルを差し出してくる。
●茶色ウサギのぬいぐるみ「マイケル」
一針一針頑張って縫ったぬいぐるみ。癒しの力が込められている。
レア度:4 ランク:4
種別:アクセサリー(片手装備)
防御力:10
魔防力:15
回復力:20
耐久:60/60
作成者:ヒカリ
使用者制限:ヒカリ
なんだこれ。どう見てもユニーク装備だし、ランクとか4だぞ。
アルクが補足する。
「ヒカリちゃんは、見かけた中で最年少にして最高の白魔法使いだ」
「まだヒールしかできないけどね」
ヒカリちゃんはくすぐったそうに笑った。天使だ。天使がいる。
これなら、勝てそうだ。
私たちは連れ立って、森へと向かう。
ヒカリちゃんは足が短いので、遅くなりそうだが、懸命についてくる。
疲れたとか文句も言わず、コマチさんの斜め後ろを歩いている。
パーティーを束ねる、レイドの形になるらしい。
一応システム設定があり隊長は、どういうわけか私である。
ただし実際の指揮系統はアルクさんに一任してある。
今回はそのまま3パーティー構成だった。
私たちは、たまに薬草を採取しながら、森の中を進む。
ウサギが複数単位でよく出現するのでさくっとやっつける。
オオカミ単体とも戦闘になったが、取り囲んでタコ殴りにした。
アルクさんがつぶやいた。
「本当に昼間からオオカミも出るんですね」
ヒカリちゃんは左手でマイケルを、右手で初心者のロザリオを持っている。
ということは、まだ出番がないけど回復力はさらに高いということになる。
ヒカリちゃんたちは、クエストを通じて仲良くなった農家にお邪魔しているそうだ。
そこで、裁縫セットを借りて、マイケルを作成した。
外は見て分かる通り、草原ウサギの毛皮でできている。
中に詰まっているのは、プリンの欠片だという。
私たちは、森の中をボスを求めて歩いていく。