会議が終わって、結局スピカは属性魔法を練習することになった。
それから一週間、スピカは兄姉たちとたくさん訓練をする。
初めて使う属性魔法、今まで使ったことなかったから一から要領を学ばなきゃらならない。
だから、色々調べて、教えてもらって、勉強して、教えてもらって、たくさん練習して、練習して、練習して、練習して、練習して────
「うーん、やっぱり。スピカ、この一週間頑張ってみたけれど、あまり延びないね。
風魔法はカペラ兄さんのおかげで、それでも少しましになったけれど、土魔法は少し地面が抉れるだけ」
「えぇ……」
リゲル兄に諦められた。なんてこっただよ。
「リゲル兄が、頑張ろうって言ったんじゃん……」
「まぁ、頑張れば
どうやら君は成長するのは並みの早さみたいだし、それじゃあ今回はダメなんだよ」
「えぇ……」
なんだか言い方が見捨てられたみたいで、とても悲しい。
逆にリゲル兄は、こんなスピカにすっごい才能があると思って属性魔法を教えたんだろう?
「まぁやって難しいものをこのまま頑張っても仕方ないさ。
何とかなるよう方法も考えてあるから、それは今一旦おいておこう」
「なんとか……?」
「とりあえず今日は気持ちを切り換えて次の問題に取り組もうぜ。
次は武器の使い方がやっぱり大雑把なところ直さないと」
「まだ練習あるのぉ……」
今日はもうへとへとなのになぁ────
それに大雑把大雑把って言うけど、こないだからリゲル兄はそれしか言ってない気がする。
「でも、それがスピカの課題だろ。
武器の使い方が洗練されれば、自ずと10個選ぶ問題もクリアできるさ」
「そんなもん、かなぁ……」
「そういえば、前にあげたゴーグルはどうしたの?」
「ごーぐる?」
そういえば、前にリゲル兄から飛空師用のごーぐるをもらったことがあった。
一応持ち歩いているけど、d級試験の時持ち物からエリーさんが見つけてくれてくれたことくらいしか印象にない。
「あれは色々な機能の付いてる超高性能ゴーグルだぜ?
それをあげたときに説明したはずだけどなぁ。聞いてなかったの?」
聞いてなかった。くれるんだへぇ、くらいにしか思ってなかった。
「スピカのそういう兄姉に感謝の足りないところ、みんなが許してるからってよくないと思うよ?
ありがとうとか、もらって嬉しいとか、大切にするね、とか。
一言ないのかなぁと思ってたんだけど」
「ごーぐるなんてリゲル兄が、勝手にくれたんじゃん……」
「は?」
珍しく少し怒った。兄弟の中でも優しいリゲル兄は怒ることも少ないから、他の兄や姉より少し迫力がある。
「んんん……あーりーがーとーうーーー!」
「…………ちっ、まいいか。とにかくそのゴーグルは僕が頑張って作ったゴーグルだから大切にしてほしいんだけど」
「リゲル兄が?」
「うん、軍の武具開発局にちょっとお邪魔して」
そんなこともリゲル兄してたんだ。
リゲル兄は武器大好きだもんなぁ。
「とりあえず、それはスピカの役に立つはずだから付けてみて、いや付けろ」
「んん……」
可哀想なスピカは強い口調で言われて仕方なく、言われたようにごーぐるを付けた。
さんぐらすみたいになってて、周りが少し暗くなっちゃうし、普段付けないから変な感じだ。
「んん、やっぱただのごーぐるだけど、見にくいよ……」
「それも説明したろ、少し魔力を流すんだよ」
「こう……?」
すると、画面のれんずが透明になって周りが見やすくなった。
「あー見える、けど……」
「空を飛ぶときはそれを使いなよ。目を守れて安全だしよ」
「でもスピカの能力、髪の毛使うから、頭に巻いたら、使えなくなっちゃうもん……」
「いやいや、ベルトを外して、その自由自在な髪の毛で固定すれば、眼からも離れないしちょうどいいだろ?
渡すときにそういったんだけど」
まぁ、そうだけどどうしても使って違和感がある気がする。
そもそも、なんでリゲル兄はそこまでしてこのごーぐるを使ってほしいんだろう?
「なんで、これ使わなきゃいけない、の?
ふつーのごーぐるで、いいじゃん……」
「それには沢山の機能がついているって言ったでしょ。
戦場に出ても、僕らは王子王女として死んでも生き残らなきゃいけないんだ。
そのための、生き残るための機能だよ」
「ふーん、例えば……?」
「また説明するのか──例えばスピカ、遠くを見られれば便利だな、みたいなことない?」
「うん、まぁある、よ……一応スピカ、隊のすないぱーだし……」
目標が遠すぎて見えないときはすこーぷや双眼鏡を使うけれど、それでも見えないときには近づくしかない。
でもそれだと相手にも気づかれるかもしれないし、地形によっては撃てないこともあるから、困ることがある。
「そう、でもこのゴーグルには疑似千里眼機能って言って、千里眼みたいな望遠機能があるんだ。
まさに、双眼鏡やスコープ要らずってことさ」
「ふーん」
セルマさんが前に使ってたやつだ、それはちょっとだけ便利かもしれない。
敵が近づいてくるまえに弾を撃ち込めれば、それだけ接近して戦わなくて済むし。
「それに、追跡機能もある。
発信機を相手に見事に当てられれば、ゴーグルからあんまり遠くに行きすぎない限り、見失うこともないのさ」
「へー」
それもちょっと便利かも。
敵が近づいてくるまえに相手の場所が分かれば、こっそり逃げることも出来る。
「ねぇ、スピカ──さっきから逃げることばっか考えてない……?」
「えっ……?」
「まぁ、スナイパーは逃げることだって必要だけれどさ。
君が言ったように今回の戦いは、相手との顔をつきあわせた勝負なんだ。
例え今後それが必要になるとしても、一旦は置いといて今回は必要な機能に目を向けてよ」
「わ、分かった……」
自分で説明したくせに。
でもそれを言ったらリゲル兄にまた嫌な顔されるし、黙っておこう。
「とにかく、そのゴーグルは今回の大会でもかならず役立てられるはずなんだ」
「ふーん、じゃあ使っとく……」
「いや、勧めといてなんだけど、またそんな適当な感じに……」
だって使うって言わなきゃいけない雰囲気だし、リゲル兄がしつこいんだもん。
それも黙っておく。怒られたくないから。
「まぁ、最後まで聞きなよ。他にもこのゴーグルにはいろんな機能が付いててね────」
「ふーん、へー、ほーん……」
その後リゲル兄のごーぐるの説明は何時間も続いた。
一応スピカも今回は聞いてみたけれど、機能だけじゃなくて構造や材質もリゲル兄は説明しだしたから、途中から全然よく分からなかった。
リゲル兄、実はこないだスピカと戦ったときみたいに、武器が関係すると少し
だけど、それは武器を持った時じゃなくて、作ってる時や説明してるときもおんなじみたい。
「と、まぁこんなかんじさ。聞いてた?」
「うん、(一応)聞いてたよ……」
よく分かんなかったけど。
「まぁ、流石に魔眼対策はできないんだけれど、それ以外はものすごいゴーグルなんだよ」
「なんだ、付いてたらよかったのに……」
「なんだっていうけど、出来たらすごいんだぞ?
流石に無理でしょんよ? 世界に二本だよ??」
結局怒られた。