シルクのパンツは思ったより高かった。
イモムーの糸は空き時間とかに、それなりに回収している。
暇になった俺たちが何をするかだよな。
正直、鍛冶というのもちょっとだけやってみたかったのは本当だった。
ただ炉が高いのはいかんともしがたい。
切ってきたスギの木が、2本丸々入っていた。
「スギの木、何かにならないかな」
「そうですね」
「そうだ。あれやろう、燻製」
「燻製ですか。でもスギですよね」
「まあね、たぶん大丈夫」
こうして噴水広場のうち、一番空いてる場所を選んでその真ん中に陣取る。
そしてスギの木を出して枝打ちをしていく。
その枝を短くして、たき火を作った。
ウサギ肉は売れ残っていたので、それを使う。
イモムシ肉は、ちょっと食べるのは躊躇するしイモムーもいるので、やめる。
スギの木に火をつけると、思ったより煙が出る。
その火の周りに、杉の枝に刺したウサギ肉を並べて煙に当てる。
ウサギ肉には、ついでに塩コショウで味付けもしてある。
広場から煙が昇って、けっこう目立ってしまった。
────────
▽ウサギ肉の燻製
────────
ふむ。それらしいものができた。
燻製肉とか、なんかスローライフっぽい気がするよな。
ビバ、スローライフ生活。
さっそく一口。
うん、淡白なささみ系の肉に、煙の匂いがついて、それっぽくなってる。思ったよりもうまい。
ジャーキーとも少し違う。
「うまうま」
「はい、おいしいです」
とりあえず、あるだけのウサギ肉を燻製にした。
どうせまた戦闘をすれば、ウサギ肉なんてすぐ溜まるし、露店で買ってもいい。
せっかくできたので、売る。
「燻製、ウサギ肉の燻製、いかがっすか」
味見をしてもらっても、それなりに好評だ。
匂いが苦手という人も中にいるみたいけど、だいたいの人はいい感じらしい。
こうしてウサギ肉を売って、また儲かった。
またイモムーの吐いたシルクの糸がたまってきたので、機織り機を使って布を織った。
俺は見てるだけだけど。
そして、俺用の装備を作った。
普通だけど、光沢があって美しい。ぶっちゃけ白くてちょっと恥ずかしいが、まあ悪いものではない。
アカリのメイド服は俺の服よりも布も必要だし、染め物もしないとしっくりこないので、作っていない。
とりあえず、早速装備してみる。
現在のステはっと。
────────
▽ステータス
────────
ステファン・マッサン
男性 人族
無職
Lv 4
HP 130/130
MP 130/130
攻撃力 5 +13
防御力 5 +14
魔攻力 5
魔防力 5 +11
残ポイント 3
バトルアックス 攻撃力+13
New クローラーシルクの冒険者の服 防御力+6、魔防力+4
New クローラーシルクの冒険者のズボン 防御力+6、魔防力+4
布の靴 防御力+2、魔防力+1
白いミサンガ 魔防力 +2
スキル:打撃Lv1、料理Lv2、栽培Lv2、伐採Lv1、昼寝Lv1
────────
どうだろうか。前よりそれなりに強い。
アカリ特製、白いミサンガも装備中です。
ああ、イモムーをゲットする直前くらいにレベルも4になってる。
このゲーム、ポイントは1ポイントしかもらえないので、序盤では装備更新によるステータス向上がけっこう効いてくるようだ。
機織り機の横で雑談をする。
「そういえばさ、ログインボーナスでガチャチケもらえるなら、リセマラすればたくさんガチャ引けるんじゃ」
「それがですねマッサンさん、キャラの再作成をしても1日にアカウント当たりで1回しか引けないんで、リセマラはだめなんだそうで」
「なるほど、そりゃそうか」
「そりゃそうですよ、交換できるんで、ゲーム内がガチャ景品だらけになっちゃいます」
「だよな」
「はい」
ちなみにキャラクターの作成は1人につきで1キャラまでだ。今のところ。
名前の変更や見た目の変更とかもできない。
あーあ、髪型は変更することができる。ゲーム内で切ったり、設定で伸ばしたりできるらしい。
あとはフェイスペイントのたぐいもできる。ほっぺに星やハート、猫のひげみたいなペイントができるけど、あんまりしている人は少ない。
それにしても燻製肉とか、リアルでは食べたことなくて、こっちで初めて食べたけど、なかなかおいしかった。
追加で狩りにいき、イモムーを戦闘させる。
イモムーとウサギはイモムーのほうが固いらしく、攻撃されてもたいしたダメージはなく、敵はイモムーの「体当たり」でそれなりにダメージだった。
「ささ、イモムーさん、どんどんお願いします」
「キュピピ」
イモムーはうれしそうに、ウサギに突撃していって、ダメージを与えていた。
あんな体当たりでダメージが出るのはゲームだからっぽい感じがする。
俺とアカリは後方支援と、アカリのヒールをイモムーにたまに掛けるだけ。
ちなみに、テイムモンスターは死亡すると魔石化して30分召喚できない。
プレイヤーだけが死んだりログアウトした場合は、強制魔石化して、手元に戻ってくる。