第84話 川

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

緑の葉の描かれた扉の向こうの世界の物語。


少年は狐を追っていた。

黄色い土の道の果て、

少年と狐の前には、

浅い川が流れていた。


狐は、ぴょんぴょんと小さな石の出っ張りを踏みながら渡っていき、

少年は、浅い川をざぶざぶと靴を濡らしながら渡った。

川を渡り終えて、

少年は靴の中の水を捨てる。

狐は逃げずに、その行動を見ている。

少年が靴を履き、

はっと、狐に気がつく。

狐はそこでようやく逃げ出す。


黄色い土の道がまた続く。

周囲はいつのまにか林になっていた。

それでも狐は止まらない。

ちらちらとさしこむ木漏れ日の中を、

少年と狐は駆けていった。


やがて、少年と狐の前に、

また、川が現れる。

今度はさっきと違い、

かなり深そうな、流れの速そうな川だ。


川には、細い木が倒れていて、

狐は臆することなく、

細い木を渡っていった。

そして、川の向こうでちょこんと座って待っている。


少年は…川の中ほどに岩が水面から出ているのを見つけた。

少年は閃き、

十分、川と距離を取り、

少年は全速力で駆け出した。

川のぎりぎりで踏み込み、ジャンプ。

そして、川の中の岩を蹴り、

ぎりぎりで川を飛び越える。

川を飛び越えた、その端っこで、

バランスを崩しかけたのは、ご愛敬。


少年はふぅと息を吐いた。

狐はそれを見ていた。

やがて少年が気がつき、

狐はまた逃げ出した。


疲れを知らぬ彼等は、

どんどん見知らぬ風景を走っていった。