第82話 恐怖

斜陽街二番街、

空き店舗に店を出した者がいる。

それは、ビデオを貸し出す店…

いわゆる、レンタルビデオ屋だ。

ただし、この店は少々特殊で、

ホラー要素がある物を中心に、取り扱っている。


ビデオだけでなく、DVDも取り扱っているが、

やっぱりホラーが中心で。

そうでなくても恐怖を取り扱ったもの。

そういうものが並んでいる。


客がそういった恐怖ものを求めて、店内に入ると、

ちょっと暗い店内には、

人が、どうにかすれ違える程度の通路と、

びっしりと並んだビデオの類。

そして、ちょっとおどおどとした若い店主が出迎えてくれる。


「あなたには…これがオススメじゃないでしょうか。B級のホラーなんですがね、狼男が…」

と、店主は説明をするが、

ビデオの箱を見れば、その説明が、箱に書かれたものと似たようなものであることに気がつく。

というか、箱の説明ほぼそのままだ。

店主にそれを指摘すれば、

「…実は…ホラーを集めていますけど、怖くて見ていないんですよ…」

と、照れながら詫びられる。


ここの店主は怖いものが苦手だ。

しかし、ビデオを手に取ると、ある程度内容を把握でき、

それを、内容を箱の説明で補う。

そして、客を見ると、オススメがピンと閃いてきてしまう。

その能力が生かせるのが、

なぜか、ホラーものでしかないため、

店主は、怖いのを我慢しつつ、

ホラー物を取り扱うレンタルビデオ屋をやっている。


くれぐれも、おどおどした店主を、

おばけの扮装などで、おどかさないように。

彼は怖いものが苦手なのだから。

気絶されてしまうかもしれない。


そんな、レンタルビデオ屋は、怖がりの店主とともに、

斜陽街二番街でひっそりと営業をしている。