第78話 邪気

電脳空間の中。

自称・超級風水師のシャンジャーは邪気を追っていた。

彼の言う邪気とは、電脳におけるバグやウイルスなど、

ついでに人の思念の悪いところも混ぜてある。

そんな、悪いものの凝り固まったものと思っていただければよい。


電脳空間の…空気はないが、空気のちりつきのようなもの。

そんなわずかな変化をとらえ、

シャンジャーは電脳空間を駆ける。

この邪気は、電脳空間だとコピーを量産できるらしい。

劣化コピーを特製の剣で削除しながら、

黒く、ちりちりとした邪気を追っていた。


(やっぱり、本体をどうにかしないことには…)

キリのないコピーとの格闘にも疲れた。

それにしても、本体のコピーを作る速度や、逃げる速度は半端ではない。

(どこか、取り合えずコピーの作れないところに追い込むしか…)

シャンジャーは考え、

「ちょっと迷惑かけるかな…」

と、呟くと、邪気を追い込みはじめた。


キーワードは…まずは水。

電脳空間に、水のイメージがはられたところに追い込む。

シャンジャーのよく知った水に追い込む。

そして、その水から、

邪気を、水面のほうへ、

とある出口に追い出しにかかる。


…八卦池…

斜陽街番外地の、スカ爺のいる池だ。

そこは電脳と通じている池だ。


邪気は電脳空間の行き場がなくなり、

大量にコピーを作って姿をくらますと、

八卦池の水面に向かって飛び出していった。


シャンジャーは、その出口から、邪気の本体が電脳空間から出ていったことを確認すると、

電脳娘々に連絡を取った。

「あ…俺。邪気が一匹、八卦池経由で出ていっちゃって…そう、捕まえて欲しいんだ…」

電脳娘々が何か騒いでいたが、気にせず通信を切った。


斜陽街に行けば、取り合えず電脳的なコピーは出来なくなる。

あとは…電脳娘々次第。

あの邪気は逃げ足が速い。

(さて、とりあえず、お手並み拝見かな)


シャンジャーは、残りの劣化コピーを削除に、電脳空間を駆けていった。