引き続き日曜日、午後。
青リンゴジャムは
それに対して試作のブドウジャムは確かな甘さがある。
好みの問題ではあるけど、ブドウジャムのほうが美味しいと思う人は多いだろう。
そんな期待の一品だ。
保管してあるブドウを入るだけ鍋に入れて煮る。
「では煮ます」
「「はーい」」
後ろにはルンルン気分の二人がいた。
「ブドウジャム~ブドウジャム~」
ミーニャがブドウジャムの即興歌を歌っている。
ラニアも期待の眼差しを向けていた。
「ねえねえエドくぅん。あのね、お願いがあるんですけど」
いつになくラニアが甘えた声を出してくる。
普段丁寧語スタイルの真面目がやると、ちょっとエロかわいい。
「ブドウジャムもその、ひとビン……」
「あっ、ああ、いいよ。ラニアの分、分けておくよ」
「やったっ、エド君、スキッ」
ガバッと抱き着いてきた。
おっと今日のラニアちゃんはちょっと積極的だ。
まだ六歳だというのに、これは魔性の女の子になりそうだ。
くっついているところが温かい。それにミーニャより全体的に柔らかい。
いい匂いがする。
くっ、中身が男子高校生だからな、アレは反応しないけど、心はムラムラする。
心頭滅却、火もまた涼し、鎮まれ俺のリビドー。
どりゃああああ。
「はぁはぁはぁ」
「どうしたのエド君?」
「な、なんでもない」
ちょっとラニアがいつになくエロかったとか言えない。
「鍋見ててあげます、休憩したら?」
「ありがとう、そうする」
庭に出て、また空を見上げる。
今日もワイバーンの群れがデルタ飛行編隊で飛んでいる。
渡りだ。
数は七匹。
家族なのだろうか。それとも適当な群れ単位なのかな。
竜ほどではないけど、ワイバーンは強い。
そんなワイバーンも寒さには弱いと。
いつかはワイバーンと戦って、ワイバーンの唐揚げ、食べてみたいな。
ミーニャとラニアにも食べさせたい。
ワイバーンと戦う……。
まずはゴブリンからだ。
この辺にはあと、一角ウサギ、ワイルドボア、ウルフなんかがいる。
一角ウサギはモンスターなのか動物なのかわからないけど、魔石が取れるので、モンスターに分類されると思う。
基本的には臆病で、人間の気配を感じると逃げてしまうので、あまりエンカウントしない。
だから戦闘してレベル上げをするとしたら、ゴブリンがメインになるのかな。
お肉が欲しい。
小さな普通のウサギ、ネズミ、なんかはいるから、小型動物用の落とし穴でも作ってみようか。
金貨を手に入れたから直接お肉を買ったり、冒険者ギルドとか酒場でお肉料理を食べてもいいけど、どうしよう。
お金は使っちゃったらそれで終わり。
だからできれば武器とか将来も役立つものに投資したい。
「さてジャム作りに戻るか」
すでに第一弾は完成して、ビンに移して今は冷ましているところだった。
第二弾を火にかけて、煮始めている。
「どう?」
「早く食べたい」
「まあ、そうだね。夕ご飯にはまだ、ちょっと早いね」
「う、うん」
今日は日曜日だからパンと干し肉の日だ。
地球だと「肉と血」といえば「パンとワイン」のことだけど、ラファリエ教では「パンと肉」というのが定番のお供え物なのだ。
だからうちでもちょっと無理して黒パンと干し肉を出している。
もっと裕福な貴族とかは、白パンとオーク肉のステーキなどを食べて、祭壇に「聖水と黒パンと干し肉」を飾ると、母親トマリアに聞いた。
聖水が何を指しているかは知らないが、異世界なのでマジもんの聖水の可能性もある。
ジャム作りは続いた。
魔道コンロは一口だけだし、鍋もそこまで大きくないので、一度に大量には作れない。
家庭料理を対象にしていて、仕事で量産することは考えられていないので、しょうがない。
夕方、ビン十個をドリドン雑貨店に納品した。
「お、持ってきてくれたか、さすがエド」
「はい。どうぞ、少ないですけど」
「いやいいんだ。どれどれ」
検品してくれる。
壺じゃなくて、ビンだから中身がよく見える。
小さい安い壺もよく塩などを入れるものとして、活用されている。
「オーケーだ。ありがとう、エド、助かった」
そういって背中をバシバシ叩く。
やめてくれぇ。俺はひ弱なんだよ。痛い。
◇◇◇◇
日曜日、夜。
まだラニアがいる。
結局、うちで一緒に夕ご飯を食べていくことになった。
本日のメニュー。
日曜日なので黒パン、一人一個。
ブドウジャム、リンゴジャム、お好みで。
主食はイルク豆。
カラスノインゲンとホレン草と干し肉のニンニク炒め。
フキの
レタスとタンポポのサラダ。
犬麦茶。
前より結構豪華になったと思う。
特にお肉の量は倍近い。値段も一人銅貨二枚相当。
日本円にしたらたったの200円なんだけどね、それを今までは捻出できなかった。
メルンさんが両手を合わせて祈る。
「ラファリエール様へ、日々の感謝を捧げます」
「「「毎日、見守ってくださり、ありがとうございます。メルエシール・ラ・ブラエル」」」
定型句を告げる。
「さあ、食べようか」
今日はブドウジャムがある。
試食はこの前したので、美味しいのも知っているけど、期待値は高い。
みんなでジャムをスプーンで取ってパンに塗る。
そういえば、あのバターナイフみたいなものは存在していない。
「うう~ん。ブドウジャムおいちい」
「美味しい、です」
「ああ、美味しいな」
「美味しいですね」
みんなパンから食べるんだね。
ブドウジャム、美味しいもんね。
パンは硬いけど、モグモグとよく
塩気の強い干し肉とニンニクで、濃い味になった炒め物も食べる。
それからさっぱりしているサラダ。
味に変化があるとうれしい。
特徴のある味が際立っていると、なお美味しい。