引き続き月曜日、午前。
さて「祝福」状態になったからといって、違いは実感しにくい。
少し、体が軽い気がする。
あとは周辺の空気が清浄な気がする。
ミーニャの金髪はいつ見ても、お美しい。
ラニアの少し薄い水色がかった青い髪も、綺麗です。
いやあ、両手に花ですな。ぐへへ。
前世じゃまったくモテなかった。
モテるどころか、友達ゼロ人だったわ。だばばばば。
今生は乞うご期待。
木漏れ日差し込む、森の日陰を進んでいく。
別に薄暗いほどではない。
この辺は都市のすぐ先だけあって、管理林に近い。
「よっし、まずはこれでいいかな」
俺は5センチぐらいの太さの倒木というか枝を拾って、適当な長さにナイフ例のミスリルで切断していく。
「いつ見ても、そのナイフ、切れ味おかしいですね」
そうだよな、普通のナイフはここまで切れ味がいいわけがない。
ミスリルのなせる業だ。
ラニアは薄々気が付いている様子だけど、それ以上のツッコミはしてこない。
まあ出てくるのは蛇じゃなくて、エルフの親愛なんだけど。
切った枝を背負いバッグに放り込んで、先を進む。
んん?
これはフキじゃないですかね。
というか、今まで無視して歩いていたけど、いっぱい生えている。
『鑑定』
【メルリアフキ 植物 食用可】
「みんな、この大きな丸い葉っぱは、フキだ」
「「フキ」」
「うん。アクがあるから苦いんだけど、煮れば美味しくいただける」
「「(ごくり)」」
喉が鳴るのが、見える。
美味しいっていっても、ちょっと大人向けかもしれない。
お子様には早いかな~。あ~ん~。
葉はうちでは食べない。ので茎だけ採って集めて歩く。
それなりに集まった。多すぎても、食べきれない。
万が一、不味かったらアレだし、これぐらいにしようか。
次の植物。
フキに1ミリくらい似ている。
フキの葉は五角形のような感じだけど、こっちはツルツルのハート形。
『鑑定』
【サトイモ 植物 食用可】
俺は茎も好きだけど、今日は芋だ、芋。
ナイフで地面を掘る。刃こぼれしないミスリルとわかってからは遠慮もない。
ちょっと掘るには贅沢なナイフだけど、いいんだ。
「芋だよ、芋。芋、知ってる?」
「「知らない!」」
「くっ、マジか……」
芋も知らないとか、可哀想に。
俺は掘り出した芋を見せる。
「これが芋」
「大きいね。食べごたえがありそう」
「そうだね」
ミーニャなんかもうヨダレが垂れそうで、食べた気になっている。
そうしてサトイモを回収した。
近くにもう一株あったので、そっちも採取する。
また手ごろな折れた枝を見つける。
折れて時間が経ち、乾燥も進んでいる。
「この枝もよさそうだ」
「ねえ、エド。枝なんて採ってきてどうするの? しかも短くして」
「これはね、スプーンにするんだ」
「あ~。スプーンね? エドが作るの?」
「うんにゃ、ギードさんに内職させようと思って」
「あ~いいかもね」
ここで種明かし。ギードさんは手先が器用だ。
何かの職人が向いている。
だが道具はナイフ一本ぐらいしか手持ちがない。
それでできる工芸品で実用度が高いもの……スプーンというわけだ。
以前、森で訓練を受けた後、母ちゃんからスプーンの彫り方も教わった。
だから初心者同然だけど指導もできる。
木のスプーン一本、買い取りなら銅貨三枚ぐらいだろうか。
不慣れでも俺やギードさんなら一日に五本は作れると思う。
合わせると、一日で一人当たり銀貨一枚銅貨五枚の収入にはなる。
大量には売れないけど、需要は確実にある。
お皿も作れるけど、木が太くないといけないから、保留。
ということで、枝が欲しかったのだ。
枝を集めて、薪にして売るよりかは、高く売れる。
ムラサキキノコ、フキ、サトイモ、それから木の枝。
今日の収穫はまあまあだな。
他には何かないかな。
「キギャッ」
あああ、びっくりした。
いや、向こうさんも驚いた様子で、
140センチぐらいの身長。人間の大人より小さいけど、俺たちよりデカい。
緑の皮膚、かわいくない顔、つるっパゲ。
――ゴブリン。
周りには、増援の様子はない。
素早く鑑定を掛ける。
【(名前無し)
3歳 オス A型 ゴブリン
Eランク
HP235/256
MP58/76
健康状態:C(不健康)
】
鑑定結果もゴブリンだ。
フォーマットが人間と同じなのが気になる。
ソロか。ラニアの言によれば、一撃で倒せる。
「ゴブリンか。どうする?」
「やっつけましょう。ちょろいわ。それに魔石が出れば、銀貨数枚よ」
「銀貨数枚」
「俺が
「牽制しなくていいわ、とどめを刺して」
「了解」
「燃え盛る炎よ――ファイア」
いつの間にか、拾った枝を杖にして装備している。
ラニアの杖の先から、炎の塊がゴブリンめがけて飛んでいき、火だるまにする。
「ギャアアア」
ゴブリンが悲鳴を上げる。
火はすぐに消えて、ゴブリンは瀕死状態、しかし「一撃よ」とか言っていたのに、わずかに息があるようだ。
「うりゃああああ」
俺は叫びながら、決死の思いでナイフをゴブリンの心臓めがけて、突き刺した。
ナイフが刺さり、ゴブリンが倒れる。
「はぁはぁはぁ」
俺は必死だった。
目の前にはゴブリンが倒れていた。
「エド君っ」
「エドおぉ」
ミーニャとラニアが俺に抱き着いてくる。
なんか女の子のいい匂いがする。ラニアかな。
ミーニャもほんのりいい匂いだけど慣れているから、わかりにくい。
俺得だな、やっと冷静になってきた。
「やったわね」
「ああ……」
俺は左手をぐーぱーして感覚を確かめる。
なんか「レベルアップ」した感覚があった。
『収納』
念じると右手のミスリルのナイフが目の前から消える。
なんだこれ、手品みたい。
感覚でわかる。収納容量はバッグ2個分ぐらい。
――アイテムボックス。
新しい転生特典だろう、魔法またはスキルが使えるようになった。
それにしても、ゴブリンは怖い。
弱っちいが、俺には怖かった。
ゴブリンの引き
「さあ、ナイフを貸してちょうだい。魔石は持って帰りましょ」
「いや、俺がやる」
「あらそう」
俺はゴブリンの胸にナイフを突き立てて、魔石を回収する。
ちょっとその作業は、お見せできないような感じだけど、慣れればなんてことはない。
俺は森で母親からの指導で何回かやらされたから、できる。
こんな森の浅いところにでも、出てくることがあるんだな。ゴブリン。
運が悪いというか、収入の面を見れば、運がいいというか。
少しばかり複雑な思いだ。
魔石は紫水晶にそっくりだ。
鈍く光を通すその見た目は、ちょっと禍々しいものを含んでいるようにも見える。
しかしこれは銀貨数枚のお金になる。
ゴブリンの皮とかも、靴になるくらいだから、持って帰ることもできるが、面倒だし放置でいいや。
埋めるか完全に燃やすのが正しい処理だけど、放置することも多い。
ウルフか何かがやってきて、たいてい食べてしまう。
ウルフさんの団体は怖いから、はやくこの場から立ち去るのが賢明でしょう。